E3+3とイラン:道は遠い(その2)

ウクライナ、イスラム国、パレスチナと国際情勢は問題が山積みである。その陰に隠れ核拡散の話題は地味で、イラン問題もあまり報道されていないので、IAEAの最近の報告書を紹介する。

 E3+3とイラン:道は遠い(その1)

イランに関するIAEA報告書

毎年9月にIAEAの総会が開かれる。総会に先立ち、理事会が開かれる。この9月の理事会に、事務局長のイランに関する報告書(GOV/2014/39、2014年9月5日)が配布された。この報告書の概要を紹介し、今後の展開を考えてみた。

E3+3とイランは、核問題の解決に向け、昨年11月協力の枠組み(Framework of Cooperation)に合意し、そのもとで、共同行動計画(Joint plan of Actions)を定め、イランとIAEA は三段階の実践的措置(Practical Measures)に合意し(2013年11月11日、2014年2月9日、2014年5月20日)、それらを実施するとともに、核関連の管理、検認活動を続けてきた。E3+3とイランは7月までの行動計画の完了を目指したが、期限は2014年11月24日まで延期された。E3+3とイランの要請を受け、IAEAは実践的措置と核関連の管理、検認活動を継続している。

 

核物質管理、検認活動と実践的措置の進行状況

実践的措置はIAEAの報告書のAnnex Iにまとめられているので、項目毎の説明は省くが次のように理解しておくとよい。

(1) 核物質管理、検認に関わる措置についてはイランの協力を得てすみやかに実施されている。濃縮ウラン(20%)の濃縮度の低減や酸化物への転換、濃縮度5%を超える濃縮ウランの生産停止は続いており、濃縮施設の能力も増えていないことから、この分野でイランは全面的に協力する政治的決断をしているものと思う。

(2) 軍事的次元の可能性のある件案(Possible Military Dimentions)は、IAEAの報告書(GOV/2011/65)に詳しいが、予想されたように、解明が遅れている。これら件案に関して、イランはかねてから「根拠のない主張によるもの(based on unfounded allegations)」と抵抗しており、最近も8月28日の書簡で「単なる誹謗で考えるに値しない(mere allegations and do not merit consideration)」と繰り返している。イラン政府が、過去に軍事的次元の件案を手がけたことを認めることは、核兵器開発計画を行ったと認めるに等しいので、イラン政府がすんなりと認めることはない。イランは全面的に否定する政治的決断をしているものと思う。従って、この解決は政治的レベルの折衝に移される可能性もありそうである。

 

軍事的次元の可能性

軍事的次元の可能性のある件案に関しては、実践的措置には次の3点が含まれている:

(1) 起爆電橋線型雷管(Exploding Bridge Wire detonator、EBW):核分裂を開始させるためには高性能爆薬により核物質を瞬時に合体させ、高密度を保持して核分裂を持続させる必要がある。このために高性能爆薬を正確に、適時に、かつ遠隔に作動させるために開発されたのがEBWである。核兵器以外の利用は限られているので、イランが核兵器開発の一環として開発したとの疑いが生じたわけである。イランは石油、ガス産業のためにEBWを利用すると説明した。IAEAはこの案件は他の軍事的次元件案とあわせて総合的に評価する必要があると報告している。

(2) 大規模な高性能爆薬の実験:高性能爆薬は核兵器内の核物質の連鎖反応を開始させるために重要である。核物質を爆薬による圧力で高い密度に保ち、臨界状態に封じ込めることが必要だからである。実践的措置ではIAEAとの情報交換を求めている。先に述べたようにイランはこれまで情報提供をしていない。また、これに関連して、Parchinが試験場として疑われているが、イランはIAEAのアクセスを許さず、衛星情報によれば、施設の建設、改築が行われいる。将来のIAEAの検認が難しくなるのではないかと懸念されている。

(3) 圧縮された物質中の中性子の伝播のモデルと計算に関する相互に合意した情報の提供:核兵器を設計するには高密度に封じ込められた核物質の中での中性子の伝播、動きのモデルを定め、計算(シミュレーション)する必要がある。これは核兵器の効率を事前に予測する上で不可欠である。文面から見て提供される情報についてはイランとIAEAは既に合意しているようである。しかしこれは、イランがその合意した情報をすみやかに提出することに合意したわけではないと理解すべきであろう。

軍事的次元の可能性のある件案に関しては、IAEAの報告書でも指摘しているよう、関連情報を総合的にひとつの体系としてとらえ、評価する必要があるであろう。しかし、筆者の個人的見解であるが、IAEAとの折衝の次の期限である11月までにイランが充分な情報を提供する可能性は低いのではないかと思う。

 

次期欧州委員会委員長

ところで、話は変わるが、欧州議会は7月15日、ジャン=クロード・ユンカー氏を次期欧州委員会委員長(2011年11月1日に就任)に選任した。6月下旬の欧州理事会で慣例を破って投票で指名されたのに続き、欧州議会でも約三分の一の議員が反対票を投じた。先日、その閣僚が発表されたが、キャサリン=アシュトン氏に代わり中道左派のフェデリカ・モゲリーニ氏がEU外務・安全保障政策上級代表に任命された。ウクライナ、イスラム国、シリア、パレスチナと懸案の多い中で、今後のEUのイラン問題への対応を見てゆきたい。イラン問題はその期限である11月24日を前に、EUの新体制の最初の課題となるであろう。

 

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