E3+3とイラン:道は遠い(その1)

 6月のIAEA理事会が迫っている。最近の IAEAのイランでの査察活動を紹介する。 IAEAとイランは5月20日にテヘランで5項目の合意に達した。また、更なる合意をめざして、7月20日の期限に向け、E3+3とイランもウイーンで交渉してきた。今後のイラン行方を考えてみた。

先日、ジョッギングをしながら、先週号(5/1723号)のEconomist Audio Version でイラン関係の記事(Moving ahead)を聞き、6月のIAEA理事会が迫っている事を思い出した。24日土曜から日本へ一時帰国する準備と、22日のコンサートに向けての練習、リハーサルなどで忙しく、投稿を思い立ったものの雑事に終われ、23日夕食後にようやく参考文献の検索を開始した。 期待した通りIAEAとイランは20日までテヘランで交渉を続けており、その合意事項がIAEAのホームページのプレスリリースとして載っていた。 ロイターなどの記事を調べるとともに、IAEA理事会への報告書を読みたいと思い、Institute for Science and International Security(ISIS)のサイトで23日付けの報告書草案を見つけた。IAEA理事会への報告書は草稿の段階では加盟国に配られるが一般へは非公開であり、理事会で討議された後に、理事会が許可すれば開示される事になる。イラン関係の報告書は開示される事が普通になっているが、一般人が 理事会文書、議事録などを入手するのは難しい。ところがISISのサイトには核不拡散関係の草稿が加盟国へ送られるとすぐに載るので、私たちには有用な情報源である。そんな訳で少し心がとがめるがこの投稿にISISのサイトに載ったIAEA の報告書を利用させてもらうことにした。

 

そこうした次第で、23日夜に家で資料をまとめ、24日朝にウイーンの空港で読み、機内で原稿の準備を始めた。旅行先でプリンターも無く、モニターも小さく、慣れないMacBookAirで原稿を書く事になり、時差ぼけと戦いながら、東京で苦労している

 

Economistの記事で気になった点をまず紹介する。第一は、Arakの研究炉の設計変更に触れている点である.燃料を天然ウランから低濃縮ウランに変えるというもので、公式なものかどうか不明である.第二はイランが追加議定書に署名する事を含め、よりイントゥルーシブ監視を受け入れる準備があるのと、IAEAが驚くとともに歓迎していると書いている点である.第三は、イランはPartinへのアクセスをふくめ、危惧される軍事次元の核プログラムに協力的でないのにはIAEAは不満そうであるが、ある西側外交筋はイランにとってこうした点に触れるがおぞましい事であろう事を認識しているという点である。第四はこれらの点に関してイランと西側の差が大きいばかりでなく、ウラン濃縮能力の大幅な削減でも隔たりは大きい事を指摘している。Economistの記事はオバマ大統領、ロハニ大統領ともに、国内の強硬派からの譲歩し過ぎとの批判に晒され大変であろうが、これからも長い道のりだろうが、ウイーンの希望に満ちたムードに期待すると結んでいる。

 

IAEAのプレスリリースによれば20日のテヘランでの交渉が行われた。両者は昨年11月で合意した協力の枠組みのもとで実施されてきたイランとIAEAの実践的措置の進行状況をレビューし、五項目の実践的措置が新たに追加された:

 

1.     大規模な高性能爆薬の実験を含む高性能爆薬の点火に関する情報の交換。

 

2.     中性子の移動とそれに関するモデル化と計算とその圧縮された物質への適用に関わる研究と論文について合意した情報と説明の提供(原文が分かりにくいが要は核兵器の縮爆のモデル計算のこと)。

 

3.     遠心分離濃縮の研究開発センターに関する双方合意した情報の提供とセンターへの技術的訪問。

 

4.     遠心分離濃縮の組み立て工場、ローター生産工場屠蘇の保管施設に関する双方合意した情報の提供とそれら工場、施設へのマネージドアクセス。

 

5.     IR-40 研究炉(Arak)の保障措置アプローチの合意

 

追加された実践的措置のうち、核兵器開発に関わる措置をイランが文書化に合意した事が進展と言えよう。遠心分離濃縮関係の措置は双方合意したと述べているよう既にレールは敷かれていると思われる。IR-40 研究炉の保障措置アプローチもレールは敷かれていると思われる。これらの措置は9月の IAEA理事会と総会に会わせ8月24日を期限として実施される。

 

IAEA理事会(GOV/2014/28)は20日のテヘランでの合意までの活動をまとめ、準備されたものである。次の点に注目しておくとよいと思う。

 

·      20%の濃縮度のウランの在庫を燃料に加工するなどにより減少した。

 

·      濃縮度5%を超えるウランの製造は停止した。

 

·      ウラン濃縮能力は削減されていない。カスケードを構成する遠心分離機は減らされていない。

 

·      軍事次元の可能性(Possible Military Dimension)では、イランが 爆発用ブリッジ回路起爆装置(Exploding Bridge Wire detonators, EBW)に関する説明をした事は画期的である.これを皮切りに軍事次元の可能性を個々の事象を統合されたシステムとしてとらえるが期待できるかもしれない。

 

·      追加議定書についての進展はない。

 

ロイターなどの報道では、ロシアのプーチン大統領はイランへの8基の軽水炉輸出を計画する事を発表した。濃縮ウランをロシアがまかなうのか否かには触れていないようだが、イランは当然自国での生産を望むだろうし、ウラン濃縮能力の維持、拡大の正当化に使われそうである。西側外交官がイランのウラン濃縮能力削減が非常に重要と考えているので、ウラン濃縮能力に対する西側とロシアの差異が感じられる。

 

これから期限の7月20日までの間に、イランの核問題がどのように進むのかがみものである。6月のIAEA理事会で方向性が出ると思われるし、E3+3の中で西側とロシアまた中国(?)がどの程度合意できるかも興味深い。ウラン濃縮能力は削減、軍事次元の可能性、追加議定書の分野で何処までいらんが譲歩するのかが、経済制裁の緩和への鍵であろう。

  E3+3とイラン:道は遠い(その2)

参考文献

http://www.economist.com/news/middle-east-and-africa/21602275-despite-smiles-vienna-gaps-are-still-wide-moving-ahead

http://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/2014/prn201411.html

http://www.isis-online.org/uploads/isis-reports/documents/iaea-iranreport-230514.pdf

http://www.reuters.com/article/2014/05/22/us-iran-nuclear-russia-idUSBREA4L0KX20140522?feedType=RSS&feedName=worldNews

http://www.reuters.com/article/2014/05/22/us-iran-nuclear-iaea-idUSBREA4L0T320140522?feedType=RSS&feedNa

http://www.reuters.com/article/2014/05/22/us-iran-nuclear-idUSBREA4L04W20140522?feedType=RSS&feedName=worldNews

 

コメント   

# ホメイニの孫 2014年05月26日 16:50
http://news.yahoo.com/iran-supreme-leader-jihad-continue-until-america-no-180230486.html

を読んでください。

イランは米国と徹底抗戦の構えです。
前途多難というより途中で何かが起こる可能性の方が高いのではないでしょうか。
# Tsuneko 2014年05月26日 17:38
ウクライナをEUの核廃棄物保管場所にしたいと考えている人たちがいるようです。

IAEAは核廃棄物の統計と将来予測をしているのでしょうか。核廃棄物の資料がみられるURLを教えてください。

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