味噌に隠された放射線防御効果

福島の原発事故の際にひまわりや麻の持つ除染作用が話題になったが、今自然食品の持つ放射線防御作用が注目されている。広島大の渡辺名誉教授が発表した論文、" Beneficial Biological Effects of Miso with Reference to Radiation Injury, Cancer and Hypertension"は科学的に味噌の放射線防御効果を明らかにしたとして欧米の研究者の注目を集めている。

 

 

長崎の児童を救った味噌汁

味噌と放射能防御の関係については長崎に落とされた原爆の被害者の体験談に話は遡る。爆心地から1.4kmしか離れていない病院に入院していた当時10歳の児童を含む20名の患者たちは重度の火傷と重篤な被曝にも関わらずその後に深刻な健康被害や癌の発生した記録がない。

共通するのは毎日、全員がワカメ入りの味噌汁を食していたという事実だった。このためこの児童は味噌が放射線防御効果を持つのではないかと考えるようになったが、まもなく英訳されてその仮説は欧州に広まった。

そのため1986年のチェルノブイリ事故後に周辺住民の多くが味噌汁を毎日食したという。味噌汁の紅葉はのちにマクロバイオテックという粗食のダイエットと一緒にとると効果的とされ、一種の免疫療法として癌予防に人気が高まった。

しかし一方ではその効果に懐疑的な研究者(特に放射線医療の立場)も多く、科学的根拠が求められていた。論文では放射線被曝事故、癌、高血圧との関連を疫学的知見と実験の観点から論じている。また仮に味噌に放射線防御効果があったとしても味噌の成分の特定や成分が発酵後に生成されるのかどうかが注目される。味噌を与えたマウスに放射線を照射する実験により、その効果が実証されたが発酵時間との関係においては発酵時間の長い味噌の効果が大きいことから、発酵により生成された成分の効果であることがはっきりした。

 

発酵成分に効果がある

味噌によりアゾキシメタンによる異常細胞発生とマウスの癌発生が抑えられマウスの肺癌、乳癌、肝臓癌発生も低下することが明らかになった。塩分を摂取したマウスの血圧は血管収縮作用で増大したが味噌を与えられた場合や(0.3%塩分を含む)ダイエット食を摂取したマウスに見られなかったことから、味噌の血圧降下作用も認識された。

実験結果から味噌中の食塩成分は単独摂取された場合と異なる振る舞うと考えられる。味噌中の放射線防御効果を持つ発酵成分はサイトカイン(注1)状の物質と考えられている。今後他の同様な放射線効果を持つとされる食品についても科学的根拠が明らかになると思われる。癌治療においても免疫療法が注目されており、自然の治癒力を効果的に使うことに関心が高まりつつある。

(注1)Cytokine。免疫システムの細胞から分泌されるタンパク質で、標的細胞は特定されない情報伝達をするものをいう。 多くの種類があるが特に免疫、炎症に関係したものが多い。 また細胞の増殖、分化、細胞死、あるいは創傷治癒などに関係するものがある。サイトカインに分類されたタンパク質の中で、最初に見つかったのはインターフェロンである。

 

 

 

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