深刻な米国の放射性廃棄物による環境汚染

マンハッタン計画の代償が現実となりつつある。さきにプルトニウム製造工場があったハンフォードとセントルイス埋め立て地の核廃棄物処理場について報告したが、それらは氷山の一角であった。

 

核実験のフォールアウト以外に全米に広がる核廃棄物の埋設処理と核兵器製造工場周辺の汚染によって、汚染地域の住民に健康被害(肺癌、甲状腺癌など)がもたらされて環境汚染の深刻さが増大している。そのほか原子炉関係の核廃棄物の不適切な処理の問題もあり、核兵器と原子力の両輪で高い代償を支払うことになった。

 

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このほどセントルイスには上記の埋め立て地(West Lake とBridgeton埋め立て地)の問題のほかに、セントルイス市の北に位置するCold Creekの放射能汚染が問題になっている。

Cold Creekの平和な住宅地で突然、土壌の放射能汚染が発見され公園の除染作業が行われた。汚染の原因は1940年代から、すなわちマンハッタン計画のなかで放射性廃棄物がセントルイス市の空港周辺を含む複数の場所に捨てられたこと。

汚染された土は地表から15cm~1mの深さにある、EPAの見解では直接的な影響はトリウム(注1)粉塵による癌発生確率の増大にあるという。下の図に示すように調査の結果、住民の癌発生は廃棄物処理場のある地域に集中している。

 

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(注1)トリウム230は劣化ウラン(U238)の崩壊で生じる。半減期は約7万5千年。

 

セントルイス市がマンハッタン計画で果たした役割についてはハンフォードやオークリッジに比べればあまり知られていない。しかし下の図に示されるようにウラン原料と精製されたウランの集積地であったことがわかる。精製工場がセントルイスにあったので、精製の化学反応の副産物である核廃棄物が膨大に生成されそれらが廃棄されたのである。

 

map of plant site

 

なぜ放射性廃棄物の管理が「ずさん」かというと、マンハッタン計画は陸軍の管理下に置かれ、マンハッタン計画から核管理が原子力規制員会に移行してからも、原料であるウランは厳重に規制されても、途中で生成される有害な化学物質は高レベル放射性物質であっても、民間の業者が扱うことができ民間業者が倒産しても新業者に簡単に処理が任されたことが原因とされる。

 

マンハッタン計画は全米を核(兵器)工場として、活用した結果この図にあるハンフォード、オークリッジ、セントルイスやユタ、コロラド、ニューヨークなど拠点となった多くの地域に核廃棄物が眠ることとなった。そのツケが回ってきたということである。核廃棄物の総量は膨大で除染も思うようには進まない。住民の健康被害はさらに広がり深刻な問題となっている。

米国はネヴァダ州ユッカマウンテンに高レベル放射性廃棄物処分場を建設してきたがオバマ政権は2009年に建設を中止。そのため使用済み核燃料の処分場がない状態が続いている。国立公園のあるニューメキシコ州Caldsbadの核廃棄物貯蔵施設で2014年2月に放射能漏れがあった。行き場のない核廃棄物は全米に及ぼうとしている。

 

 

 

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