米国原子力規制委員会が放射線基準値改正か

かつて原子炉を日本に導入するときに「少量の放射線は体に良い」というホルミシスの考えが、日本中に広められた。いまでは死語に等しい「ラドン温泉」の効能もこの理論によるものであるが、これは原子炉を建設する際に住民を説得するためのキャンペーンに使われたことはよく知られている。

 

低レベル放射線被曝が人体に与える影響は(低線量被曝が血行を良くするなど体によいとする)ホルミシスの考え方に対するLNTがあり、両者は議論が絶えない。また一方では非線形性の挙動を提唱する説もあって自然放射線(2.4mSv/年)以下の領域の放射線効果については結論がでていないのが現状である。

 

6a00d83452719d69e2014e60754e10970c copy

Source: Red State Eclectic

 

これは物理量(信号)がバックグラウンドと同程度になる信号対バックグラウンド比が1以下の世界であるのでもともと難しい問題であることは想像に難くない。しかし現代ではラドン温泉を口にする人はいないし(ラドン温泉がなくなったわけではない)、原子炉の近くに住む人も健康に良い、ということを真に受けている人はいなくなった。

ところが原子力においては規制がきびしく、安全管理に気を使う米国で「放射線は体によい」という呪文が復活しそうだという。原子力規制委員会はこれまでの基準がLNT(生体への放射線効果が低線量でも線形性が保たれる)を根拠に設定したもので、ホルミシス説に鞍替えしようとしている。

 

この動きはいわゆる「原発推進派」の圧力によるものであるとNIRS(Nuclear Information Resource Service)の担当者は語った。もちろんホルミシス説に根拠があるわけはないので、NIRSは基準値が上がれば被曝者が増えて恐ろしい結果になるとしている。これまで原子炉の運輸者に求められてきた周辺住民の被曝を最小限に抑える歯止めがきかなくなるからだ。

EPAはLNTを根拠としているため政府機関同士の整合性もなくなる。ちなみに日本の基準値の原発作業労働者の100mSv/年は100mSv付近に閾値があるとする考え方からでたものであり、一般の被曝量の許容限界1mSvはLNTに従ったものである。

米国の核施設周辺の汚染が問題になっている最中で、原子力規制員会がホルミシス説をもとに基準値改正を行うことになれば、放射線レベルそのものが核兵器工場と原子炉汚染で高まっているとする原子力反対派の主張が事実だったのかもしれないという疑念をいだかせる。

 

Nuclear Newsの記事によれば、原子力規制委員会が低レベル放射線被曝は健康によい、従って福島の住民の健康促進になる、といった表現は現実に避難を余儀なくされた住民の感情を逆なでするに違いない。

連邦政府の公式見解によれば、基準の作成にあたり、根拠となるモデルをLNTをホホルミシス説で置き換えることは提案であり、原子力規制委員会が検討し最終判断を下す、としている。下の図のようにatoms for peaceが始まった当時に比べて核汚染物質の蓄積は増え1億人が周辺地域に住むという現実に即するようにとった苦肉の索なのかもしれない。

 

nuclear storage

Source:GOODSPEAKS

判断にいたる過程で癌リスクに閾値がないとするLNTモデルとホルミシス説の議論が復活するものと思われるが、日本の緊急時の基準(100mSv)が閾値の存在を考えていることが気になる。筆者の知る限り100mSvの閾値の根拠は広島、長崎の被爆者のデータによって被曝による明らかな人体への影響がでた数値を根拠にしているとされる。

本カラムでは低線量被曝と癌発生の関連を今後も集中して取り上げることにしている。

 

 

 

You have no rights to post comments

hitachihightec

hitachihightec science

Copyright© 2013.   放射線ホライゾン rad-horizon.net   All Rights Reserved.