安定ヨウ素剤の過剰摂取について

被爆から身を守るには(その1)-甲状腺癌から守るヨウ素で原子炉から大量に漏れ出した核種の中で半減期の短いヨウ素同位体131Iから、甲状腺癌から守るために飲む安定ヨウ素剤について簡単に紹介した。

Iodine-Tablets

Photo: Good Discussion

 

ヨウ素の半減期が短い(8日)とされ最終的に131Xe(半減期11日)に行き着けば、体外に排泄されることで、甲状腺に集まり癌発生を引き起こすことを防止できるとされている。

 

iodine-131-decay

 

Photo: Radioactivity and Radiation

 

実際にチェルノブイリ原発事故では住民に安定ヨウ素剤が配られたことで子供の甲状腺癌発生を最小限に食い止めたとされる。また日本でも原子炉周辺の自治体に備蓄され、いざというときに配布されることになっている。

ヨウ素が甲状腺に集まる性質を持っていることは知っている人が多いと思うが、ヨウ素摂取量には下限と同時に上限が存在することや、バセドウ氏病や橋本病(注1)の患者にとっては、過剰摂取で病気が悪化したり癌になったりする危険性があることはあまり知られていない。

(注1)バセドウ氏病は新陳代謝を高める甲状腺ホルモンが異常に多いため代謝が活発になり様々な障害を引き起こす。ホルモン異常の原因は甲状腺刺激ホルモンの受容体(TSHレセプター)の抗体が受容体を刺激することで発症する。原因は解明されていないが注意しなければならないのは、ヨウ素の過剰摂取でバセドウ氏病を発症することである。これをヨードバセドウ氏病として区別する。

橋本病(甲状腺機能低下症)はバセドウ氏病の逆で抗体(自己免疫)によって甲状腺に慢性の炎症が起きる病気である。この場合にもヨードの過剰摂取で発症することがわかっている。甲状腺の専門医院である伊藤病院に詳しく説明されているので、ぜひそちらを参照されたい。

 

日本人の甲状腺癌発生率は欧米人の50-100倍高い。これは日本人のヨウ素の摂取量が(1.5-3mg)が適正(注2)とされる0.5-0.8mgの3-4倍であることと関連する。もちろん人によっては秋雨感的に昆布を食べることで、はるかに摂取量が多くなり、橋本病を発症する例も多い。

したがって健康食品とはいえ昆布の過剰摂取、安定ヨウ素剤の過剰摂取に注意しなければならない。

(注2)伊藤病院の資料によればヨウ素が多い食品は以下のようなものがある。

昆布(昆布エキスを含む調味料、昆布茶、16茶、ひじき、わかめ、のり、寒天、もずく

 

服用基準

安定ヨウ素剤の服用基準では以下のように分類されている。

[I] 新生児については、ヨウ素量12.5mg(ヨウ化カリウム量16.3mg)。

[II] 生後1カ月以上3歳未満の者については、ヨウ素量25mg(ヨウ化カリウム量32.5mg)。

[III] 3歳以上13歳未満の者については、ヨウ素量38mg(ヨウ化カリウム量50mg)。

[IV] 13歳以上40歳未満の者(妊婦含む)については、ヨウ素量76mg(ヨウ化カリウム量100mg)。

[V] 40歳以上の者については、服用しない。

 

この服用基準に従えば13歳以上の服用は適正値の100倍となることに注意したい。場合によっては橋本病発症の危険性がある。またせっかく防御するはずの甲状腺癌リスクが増えるとするならば、まさに諸刃の刃となってしまう。

安定ヨウ素剤の取り扱いマニュアルは緊急被曝医療研修資料に詳しい。

一般に入手もアマゾンで簡単にできる。一錠で1mgのヨウ素が摂取できるのだが摂取のタイミング(注3)や過剰摂取にならない服用基準の厳守が必要である。ちなみに成人の最大摂取量が3mgに対して緊急服用量は25倍となる。

(注3)服用タイミングは被曝前24時間前あるいは被曝後2時間であるので、現実的には緊急時に高放射線の現場で作業する前に服用するか、被曝後すぐに服用しないと意味がない。

 

 

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