福島原発の汚染水は、税金の無駄使いをやめ、さっさと、すべて海洋に放出すべき

本コラムの特徴は、多くのオーサーがそれぞれの特徴を生かした記事を書くだけでなく、互いの議論が行われることです。これは、偏に、管理人の懐の広さによるもので、このようなコラムは、他に、存在しない、極めて特異なコラムでしょう。編集者の懐の広さに甘えて、編集者の記事を批判する記事を書かせていただきます。

9月08日にカテゴリ: Cafe Horizonで「止まらない汚染水と海洋汚染 」と言う記事(文献1)を書いておられます。これは、時事通信の記事「海流出、さらに2兆ベクレル=ストロンチウムとセシウム―福島第1 」(カテゴリ: News and Topics Onlineに、9月08日に掲載。文献2)の記事を受けてのものと思われます。

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まず、本ブロガーの、海水汚染の考察のご紹介から始めます。

本ブロガーは、一年前に、「汚染水、放出準備に着手を、と米専門家ーーやっと、まともな声。さっさと海に流せば解決。地下水遮蔽対策に何千億円もの税金はどぶに捨てるようなもの」(文献3)と主張しました。これは、事故直後の2011年06月に報告した、海水中の放射能濃度が、完全に無視できるレベルであるという見積もり(文献4)に基づいています。

行った仮定は、汚染水中の放射能の見積もり、2.6 E17 ベクレルと、汚染水の広がり体積を500km四方で深さ1kmとしたこと、の二つです。

2.6 E17 ベクレルと言う数字は、私が独自に算出した値です。おそらく世界で最初の推定値ですが、後日、原子力保安院および原子力安全委員会が同様の推定値を報告しており、確かさの高い数字です。

海洋中の拡散深さは、過去のデータに基づいているので、尤もらしい数字です。拡散面積は、保守的に小さくしました。

そのような仮定で得られた濃度は、海水1kgで0.1ベクレルでした(文献4)。当時ばたばた決めた飲料水の暫定基準は1kgあたり200ベクレルでした。その1/2,000分の一と言うことになります。従って、健康への影響は、完全に無視できるといって良いでしょう。

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文献1は、文献2の「2兆ベクトル」と言う数字に反応した様に思われます。放射能の素人は「兆」と言う数字を、とてつもなく大きく感じると思いますが、海水に放出できる総量としては、極めて小さいものです。上述のように、その10万倍の放射能を海水に放出すると仮定しても、健康への影響は全く懸念されない濃度です。

文献1では、図の選択を誤りました。赤道を越えてオーストラリアを越えて、南極にまで影響が及んだ、なんと凄いことか、と怯えさせる図になっています。また、筋状の構造も恐怖を誘います。確かに、この世に、完全なゼロは存在しえないので、南極にまで、大西洋にまで、きっと影響が及ぶであろうことは、疑いようがありません。しかし、この図は選択してはならなかったのです。

津波の分布

まず、濃度の単位がcmになっています。放射能の海洋中濃度の単位は、cmではありません。単位から、明らかに放射能濃度の分布(シミュレーション)ではありません。海岸の波形を反映した反射が見えている様に見える分布から考えて、おそらく津波のシミュレーションでしょう。また、この図の出典が明示されていないのも、よろしくありません。

海水中の放射能濃度をドイツの海洋研究所がシミュレーションした、と、あるブログが報告(文献5)しています。そのブログの主張自身は説得力がなく、したがってデータの信用度も不明ですが、載っている図は、もっともらしく見えます。

海洋中放射能の拡散濃度

上の図が海洋への放出から891目の濃度分布で、下図が2276日目とのことです。放射能は海流と拡散によって広がりますが、それを反映していると言える分布です。長期間経過すると細かい構造がなくなっています。

下図と比べて一目瞭然ですが、文献1の図では、南極まで拡散しているのに、筋状の細かい構造も見えています。拡散ではあり得ない構造です。

自分の主張に近いデータほど、主張ほど、厳しく疑って見ないと騙される、を、自分自身への自戒の言葉にします。

科学者は、どんない恐ろしい状況の中にいようと、冷静でなければならない。冷静さを失った段階で、素人と何ら変わらなくなる、を自覚すべきです。専門家づらしてはなりません。デマをばらまく凶器になることを自覚すべきです。私も、原発事故と聞いたとき、パニックになりました。親戚のいる九州への脱出も考えました。しかし、女房は冷静でした。全員が逃げれるわけではない。残った人のために、何かしよう。その言葉で、事態を冷静に分析することを始めました。すると、全く何の心配もないことが分かってき始めました。toshi_tomieのブログをお読みください。パニック状態では何も見えません。冷静に分析すれば、事態は大したことがないことが分かります。若干、大したことがあってもそれを軽減する手法が考え出せます。

と言うことをお話しできるきっかけを作ってもらった、文献1でした。

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(参考文献)

1)

「止まらない汚染水と海洋汚染 」

http://www.rad-horizon.net/cafe-horizon-column/292-contaminated-water-and-sea

2)

「海流出、さらに2兆ベクレル=ストロンチウムとセシウム―福島第1 」

http://www.rad-horizon.net/news-topics-online/291-2014-09-08-12-24-17

3)

2013年09月15日「汚染水、放出準備に着手を、と米専門家ーーやっと、まともな声。さっさと海に流せば解決。地下水遮蔽対策に何千億円もの税金はどぶに捨てるようなもの」

http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/52124821.html

4)

2011年06月25日「汚染水を海に放流したときの、放射能濃度の見積もり」

http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/51972712.html

5)

http://kaleido11.blog.fc2.com/blog-entry-2309.html

コメント   

# 編集者 2014年11月02日 14:23
誤解のある図については以下の説明を加えました。

図の出典:

太平洋津波警戒センター(Pacific Tsunami Warning Center)http://ptwc.weather.gov/text.php?id=hawaii.2011.03.11.073148

このデータは欧米ではメデイアが多くとりあげられて流通しているようです。

http://www.fastcodesign.com/1663400/infographic-video-watch-japans-quake-ripple-through-the-pacific

http://www.sigmalive.com/news/international/41486/iaponia-seismiki-donisi-61-rixter
出典を記するのは忘れましたが、あくまで福島沿岸の問題ではないことを示すためのイメージのつもりですので悪しからず。以下を追記しておきます。


津波の影響をシミュレーションした結果。放射線レベルではない。そのためスケールがcmではない。拡散ではなく海流を含めた津波に寄る効果だが、影響の広範囲さを示す。紛らわしいので説明を付加してある。


希釈したら人体に影響のないレベルというのは、確かにビキニ水爆もチェルノブイリもバックグラウンドが高くなるだけで、統計的には喫煙より低い確率、なのかも知れませんが、欧米諸国の批判はやはり「垂れ流しを容認する態度」が、許されないということのようです。

川に汚物を捨てても川下の人が飲料に絶えられる水質なので、という論理は説得力がありません。税金をこういうことに使いたくないのは誰もがそう思うはずです。

それはそうと汚染水を処理せずに流し続けるとどうなるのかシミュレーションの結果があれば教えてください。
# Toshihiro 2014年11月06日 14:42
Toshiさんのお考えとは異なりますが、放射線管理はLNT仮説を想定して行われますから、薄めても損害 は減らないことになります。生物圏からいかに隔離するかのみが問題となります。海に流しても生物圏から隔離 したことにはならないだろうと思います。
# toshiさん 2014年11月14日 05:35
Toshihiroさん:

放射能は、隔離するか、うんと薄めるか、の二つの処理法があります。

科学者が一般人に迎合して政治的発言をするのはよろしくないと思います。LNTは政治的妥協の仮説であり、決して科学の成果ではないこと、当然ご存知のことです。

私が何回も強調している様に、そして、Toshihiroさんがご存知でないはずがない様に、
放射線の生物学的影響は、積分線量ではなく、線量「率」で決まります。

積分線量を強調すると、より安全だ、と言うのも間違い、です。

1シーベルトを一生かけて浴びるのと一秒で浴びるのは同じだ、と言う、極めて恐ろしい主張、に加担することになります。

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