放射線の生物学的影響は、呼吸が作る活性酸素と同程度になる線量率から

(まえおき)

6/13の記事、「放射線は得体の知れない障害を起こす、と言う誤解。放射線の物質との相互作用は、二次電子生成が、ほぼ全て」に対して多くのコメントを頂いていました。返事を忘れていて、申し訳ありませんでした。

放射線の健康への影響に関しては、読者のお知りになりたいことの多くを、個人のブログ(文献1)に書いています。是非お読み頂いて、巷に氾濫している誤解を払拭して頂きたいです。このポータルサイトでは、放射線科学に関連する記事を書くつもりで、原発および放射能に関する、世の中の間違った認識を指摘する記事は多く書くつもりはありませんが、頂いた多くのコメントに共通することへの回答を兼ねて、第一回目の記事の補足として、本記事を書きます。

(呼吸が作る活性酸素の量は、自然放射線の1,000倍)

6/13の記事で、放射線と物質との相互作用は、二次電子の生成が全て、と書きました。生物への影響としては、二次電子は、活性酸素を作る効果のみ、とも書きました。放射線で作られようと、呼吸で作られようと、活性酸素に違いはありません。

人間が生きるのに、肺呼吸は必須です。呼吸に依り活性酸素が作られ、一定の割合でDNAを損傷します。ですから、肺呼吸をする生物が生存するには、DNA損傷修復機構が備わっていることが必須です。

呼吸が作る活性酸素の量は、自然放射線の1,000倍、とのことです(文献2)。これから、どの程度の線量率から生物に影響が出るかを、推測しましょう。。

(生物学的影響が出るのは、毎時200μシーベルトから、だろう)

自然放射線の線量率は毎時0.2μシーベルト程度です。すると、毎時200μシーベルトの放射線を浴びると、呼吸が作ると同程度の量の活性酸素が作られることになります。我々の体内には、この程度の頻度のDNA損傷はを修復する能力が備わっていることになります。毎時200μシーベルトの放射線では、修復機能の活性化も期待できます。これを一桁も上回る損傷が発生すると、修復機能が追いつけず、健康への影響が顕著になる、と期待できます。

つまり、毎時20μシーベルト以下では、何の影響もなく、毎時200μシーベルト前後では、健康増進効果も期待でき、毎時2ミリシーベルト以上では、健康被害が顕著になるだろう、

と推測できます。

(動物実験の結果のまとめ、オタワ大DB

上の推測を、実際の動物実験と比較して見ます。  

 

オタワ大学と電力中研の共同研究で、論文等に報告された世界で過去に行われた多くの実験結果がデータベース(オタワ大DB)としてまとめられています(文献3)。私の個人ブログで(文献1)で何回も引用している、オタワ大DBを積算線量ー線量率にまとめた図を、下記に示します。

オタワ大まとめに追加 上で行った推測通りの結果が得られています。

 

(宇宙飛行士の被曝量は、半年で数百ミリシーベルト)

国際宇宙ステーションでは、一日に2ミリシーベルト、あるいは0.5ミリシーベルトの被曝をするらしいです。すると、宇宙飛行士は、半年で、100ミリ~400ミリシーベルトの大量の被曝をします(文献3)。一般の方にすれば、トンでもない被曝ですが、上の図から、健康に影響がないだろう、と言えます。

 

多分、この放射線生物学の知見が共有されているからでしょう、宇宙ステーション開発の推進をやめようという動きは聞こえて来ません。

 

また、寡聞にして宇宙飛行士が次々にがんにかかったというニュースも聞こえて来ません。宇宙飛行士の健康に関する情報をご存じの方がいらっしゃれば、教えて下さい。

ーーーーー

(参考文献)

1)

toshi_tomieのブログ

http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/

2)

20110421日「放射線は、得体の知れない特別な障害を起こす、という誤解」

http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/51945173.html

3)

20130731日「若田光一さんが日本人初の宇宙ステーション船長にーーー半年で400mSvを被曝?1mSv/年を大騒ぎする反原発市民団体は、こんな被曝を許すの?騒がないの?」

http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/52120082.html

 


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コメント   

# Katsuya 2013年09月25日 08:09
なるほど。高原に住む人たちは平均寿命がむしろ長い(長野)。水と大気の関連が問われるが宇宙線の降り注ぐ高地で、少なくとも平均寿命が癌により短い、ということはなさそう。

放射線の誤った理解でストレスが大きくなる方がよっぽど深刻なのでは。
# Toshi 2013年11月23日 02:17
返事が大変遅くなって、申し訳ありませんでした。

記事に紹介したように、宇宙飛行士は、年に1シーベルト程度の被曝環境で仕事をします。

幾つかの生物実験の論文を読んだ私は、宇宙飛行士が宇宙ステーションで受けた被曝で健康を害するとは、全く思いませんが、

ホルミシス効果がでるかどうかに興味があります。

宇宙飛行士の健康データは相当に蓄積されているはずであり、是非とも、公開して貰いたいものです
# Noriko 2013年10月18日 08:11
呼吸による被爆83%、食事7%、飲料8%~村上周三・東京大学名誉教授
http://amba.to/1gNBMkP
は本当ですか?
# Toshi 2013年11月23日 02:13
返事が遅くなって申し訳ありませんでした。

引用して頂いたブログにある、村上氏の言葉が正しく引用されているかどうか、私は知りません。

被曝、とは書いておらず、
「環境化学物質の83%」としか書いていなせん。
一日の呼吸量、その重量を計算し、食事の量と比較し、大気中の環境化学物質の濃度と、食品注の環境化学物質の濃度をかければ、計算できますが、面倒なので、やりません。

それほど、間違った数字でないような、直感です。

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