医療被曝、どう考えるべきか? 過剰検査はいけないが、あまり被ばくを気にしてはいけない。検査しないことの被害が甚大

本コラムの編集者から、読んでは?と紹介された記事について、コメントします。

日経ビジネスに8/8に掲載された、絶対に受けたくない無駄な医療/ CTの被ばく量をご存知でしょうか?と言うタイトルの、室井一辰と言う医療経済ジャーナリストによる記事(文献1)です。

CT検査は年間4,000万件であるが、野放図に検査をしていないか?と言う主張です。

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2011年に医学誌「Lancet」に掲載された、日本の国民皆保険50周年を振り返る論文の一つ、東大の橋本氏らによる論文に書かれた文章を紹介しています。

「医療サービスの提供は自由放任主義的アプローチをとってきた結果、医師、病院などの専門家集団のガバナンスが弱く、説明責任が十分果たされてこなかった」

「医師および看護師の質は、免許を有していること以外ほとんど注目されていなかった」「医師と病院は、自らの裁量で専門領域を標榜している」

「正式な専門医認定手続きは1980年代に始まったに過ぎない」

「認定プロセスの厳格さは専門医団体の間でばらつきがある」

「正式な認定更新手続きや研修枠の指定制度がある団体はほとんどない」

そして室井氏は、

CT検査では無視できない被ばく量が伴っており、米国ではむやみに実施すべきではないという方針が出ている。にも拘わらず、日本ではCT検査が一般化し、誰も実施に疑問を抱いていないように見える。患者側は、被ばく量の情報をほとんど持ち合わせておらず、説明を受けることもほとんどない。医師などによる患者に対する説明責任が果たされず、患者もCT検査を野放図に受けている。

と主張しています。

以上に関しては全くその通りです。

医師というだけで、自分が特別に偉い人間と勘違いする人が多い様で、また世間も無批判に言うことを信用するようで、福島原発事故以降の、多数の医師による、無知な発言が、人々を不必要に怖がらせてきました。発言には大きな影響力があるので、何年間か置きに試験をして、不勉強な医師の医師免許をはく奪すべき、と私は考えます。

そして、過剰な検査は、害悪です(文献2)。特に、甲状腺の過剰検診がひどい(文献3)です。過剰検査を改めるべき、全くその通りです。

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ただし、室井氏は、勉強不足です。医療ジャーナリストではなく、医療'経済'ジャーナリスト、だから仕方がないかも知れないのですが。

何が勉強不足かと言うと、この記事を書くまで、CT検査一回で受ける被ばく量を知らなかった、と言うことです。それはまだしも、放射線従事者の緊急被ばく線量限度100ミリシーベルトで、健康にどういう影響があるかについて、全く無知であることです。

そして、福島原発事故で作業した人の月々の被ばく量が1~10ミリシーベルトだった、"それと同等だから"CTの被ばく量は、凄い!と脅すことに、ジャーナリストとしてのレベルの低さが現れます。海外では、CT検査の増加とともにガンが増えるという事実が明確になってきていると書きながら、出典も示さず、定量的な記述もしないことにも、レベルの低さが明らかです。

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広島原爆で明らかなように、大量の被ばくをすれば、生物にとって重大な影響があるのは明確ですが、健康への影響は、被ばく量に大きく依存します。"CT検査の増加とともにガンが増える"と言う主張も、きっとその通りだろう、と想像はできますが、どの程度の被ばく量から、と言う定量的記述なしでは意味がない、主張です。そして、あらゆる主張の紹介に於いて、どの団体がどういう手法でその主張に至ったかが、決定的に重要であり、読者による検証を可能にするために、出典の明示は、「必須」です。科学論文に於いてでだけでなく、一般のジャーナリストの基本です。

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どの医学検査でどの程度の医療被曝があるか、殆どの検査について、toshi_tomieのブログで簡単に紹介(文献4)しています。どの程度の被ばく量で生物への影響が現れるかについても放射線生物学の結果を紹介(文献5)しています。さらに、被ばくが気になるがCT検査を受けるべきか、とのご相談を受け、ぜひ検査を受けてくださいとお答えしています(文献6)。

ぜひ、これらのブログ記事をお読みいただくようお勧めします。

過剰検査及び医療被曝に関するこれまで調べたデータに基づく限りでの私の意見は、以下のものです。

過剰検査は減らすべきであり、被ばくを伴わない多くの検査についても、是非とも関係医学団体は指針作りをすべき。しかし、一般的に、被ばくを怖がって検査をしないことによる不利益は、極めて大きく、よほどでない限り、医療被曝を気にせずに、検査は受けた方が良い、です。

 

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(参考文献)

1)

絶対に受けたくない無駄な医療

CTの被曝量をごぞんじでしょうか?

日本の国民皆保険の弱点は「自由放任主義」

室井一辰(医療経済ジャーナリスト)

日経ビジネス 2014年8月8日(金)

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140806/269751/

2)

2013年08月20日08:00「内視鏡診断は、見てはいけない小さな胃がんを見る『過剰診断』か?ーー胃がん検診の厚労省の新指針で、内視鏡を推奨せず」

http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/52122148.html

3)

2014年03月31日08:00「甲状腺がん手術大国の韓国で、中央日報の社説が「過剰診断・手術防ぐべき」と主張。わが国も、甲状腺がん「過剰診断」大国になるのか?」

http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/52145436.html

4)

2013年05月27日08:00「医療被曝ーー歯科撮影は数マイクロ、胸部レントゲンは数十マイクロ、CTは20-30ミリ、心臓血管撮影は数Sv」

http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/52112593.html

5)

2013年05月17日20:00 「100mSv以下で、発がんしない、は間違いではないか?発がんする例を無視するのは何故か?ーー基本的には、オタワ大がまとめたデータベースをご参考下さい」

http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/52111303.html

6)

2012年06月05日06:30「被曝が気になるがCT検査を受けるべきか?ーー日本人の30~40歳の死亡率一人/千人よりもリスクは小さい」

http://blog.livedoor.jp/toshi_tomie/archives/52063304.html

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