電離放射線によるDNA損傷修復のメカニズム

電離放射線の影響でDNAが損傷すると、分子生物学を駆使してゲノムを保護し、修復するのに必要な多様な細胞修復が正確かつ時間通りに行われる。SOG1呼ぶ「マスター遺伝子」がDNA修復のために指令を出す「監督」として働き、植物細胞の様々な遺伝子と協力して効果的なDNA損傷を修復することは知られていた。しかし、どのような特定の遺伝子が直接修復作業にあたるのか、そしてSOG1がそれらと相互作用してDNA損傷応答を「監督」する方法は明らかではなかった。

 

DNA損傷修復の「現場監督」SOG1

民間の研究所ソーク研究所(Salk Institute)(注1)の研究チームは、DNA損傷に応答してゲノムを保護および修復するために必要とされる細胞プロセスを制御するために、どの遺伝子がオンまたはオフになっているかを見出した(Bourbousse et al., PNAS online Dec. 12, 2018)。

(注1)カリフォルニア州サンデイエゴにあるNPOの生物医学研究所。職員は1,000人以下の小規模な研究所だが、論文引用数では世界1,2位を争う異色の先端研究所である。

これまで損傷したDNA修復作業のタイミングと全体的な調整は、ほとんどわかっていなかった。SHG1は「監督」のように機能し、DNA損傷に対する一連の作業プロセスが解明されつつある。

 

研究チームは、DNA損傷修復のSOG1の直接的な役割を決定するために、遺伝子研究に一般的に使用される植物(シロイヌナズナ)で一連の実験を行った。2セットのシロイヌナズナ苗を育て、ひとつは正常で他はSOG1遺伝子の突然変異で機能しないようにした。

 

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Credit: emboj.embopress.org

次に、DNAの二本鎖切断を生成するために強力な電離放射線に植物ペアを暴露した。その後、20分から24時間までの6点で、非照射対照と比較して遺伝子発現変化を分析した結果、その期間中、DNA損傷に応答して、約2,400の遺伝子の発現が上昇または低下し、そのほとんどがSOG1の存在に依存することを見出した。しかし、約8%にあたる200しかSOG1によって直接活性化されていないことから、複雑な遺伝子調節ネットワークの第1層を明らかにし、SOG1が"監督者"の役割を果たしていることを示した。

 

これらの約2,400の遺伝子が何をしているかを理解するために、同じような発現パターンを有する遺伝子を同定するDREMと呼ばれるソフトウェアプログラムにデータを入力した。これにより、異なる時間スケールで、DNA損傷に対する植物の11の遺伝子群を同定した。下図の遺伝子群がSOG1の下で損傷修復に直接関わる。

 

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Credit: PNAS

ゲノムの安定性を維持するSOG1と類似の動物の遺伝子との間には多くの類似点があるため、この研究は他の生物におけるDNA損傷応答を明らかにできる可能性がある。例えば癌を予防するためのDNA損傷との戦いの役割が知られている腫瘍抑制因子p53遺伝子などがある。SOG1によって直接的または間接的に制御される遺伝子ネットワークの探索を継続することで、生物の電離放射線のメカニズムの理解が進むものと期待されている。

 

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