ニホニウムに続け〜未知の同位体は4,000

チェルノブイリや福島第一事故によって、放射性物質の印象は明るい未来を託す存在ではなくなったが、今日様々な分野で利用されていることは忘れてはならない。医学では、日常的に疾患の診断と治療に使われており、農業では照射は、農作物の品種改良に欠かせない。考古学では、同位体の存在比で正確な年代測定が可能になった。

 

原子核が別の核種に壊変する際には放射線が放出される。α線からγ線にいたる放射線の放出によってエネルギーが放出される。これまでに実験で約3,000種類の異なる核種が報告されている。しかし、現在の理論でまだ観察されていない同位体が約4,000も存在する。世界中で核物理研究者がエキゾチックな核を作り出す強力な加速器実験に取り組んでいる。

核物理学の誕生

フランスの物理学者ベクレルは1896年に自然放射能を発見した。ベクレルは日光に曝されたときにウラン塩が燐光を発する現象を研究しようとした。ベクレルは、不透明な紙で覆われた写真用プレートにウラン鉱石を置き、直射日光のもとに晒した際に、プレートが感光したので太陽で感光したものと考えた。

しかし、数日間の曇天のおかげで、ベクレルはこの観測装置を引き出しに収納したが、写真板はまだ光がなくても感光した。この感光はウランの自然放射能であった。崩壊したウランの核、すなわち異なる核に変換されたウランの核は、自発的に放射線を放出したことが初めて実験で確認された。

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Credit: Erin O'Donnell

 

上図では250個ほどの安定同位体をピンク色で示し、珍しい同位体は緑色の約3,000個、予測された未知の同位体、約4,000個を灰色で示している。ベクレルはこの発見により1903年にノーベル賞を受賞し、その後の核物理の発展は目を見張るものがあるが、重要な事実は未知の同位体の探索は道半ばだということである。

既知の原子核は118の異なる元素をつくり、それらのうちの一部は人為的に作られた元素である。周期表の元素には、ギリシャ語の「ισότοπο」である「同位体」が多数存在する。「同位体」とは「同じ場所」を意味し、周期表の同じ場所を意味する。

 

同じ元素であるためには、2つの同位体は同じ数の正の荷電粒子陽子を持たなければならないが、それは中性子の数でもある。例えば、金は周期律表の元素79であり、金のすべての同位体は同じ金属、黄色の外観を有する。しかし、発見された金の既知の同位体は40種類あり、およそ20種類が存在すると理論で予測されている。これらの同位体のうちのたった1種類だけが、安定に天然に存在する金の形態で、残りは「希少同位体」とも呼ばれる放射性同位体である。

現在の原子力科学の研究は、新しい同位体を発見し、その性質を理解し、最終的にそれらを効率的に生産するための技術開発を目指している。そのためには重粒子加速器と放射線検出器が使われる。そのひとつがミシガン大学の国立超伝導サイクロトロン研究所(下図)である。

 

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Credit: NSCL@Michigan State University

国立超伝導サイクロトロン研究所のSuN検出器(下の写真)はγ線を測定し、希少同位体の特性を研究するのに役立っている。SunとはSumming NaI(Tl)の略で8つの光学的に分離されたセグメントに分割されたバレル型のシンチレータ検出器である。 セグメントの各々は、3つの光電子増倍管によって読み取られ、合計24の信号が得られる。検出器軸に沿ったビームラインの直径は45mmである(下図)。

 

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Credit: NSCL@Michigan State University

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Credit: NSCL@Michigan State University

 

崩壊のγ線で放出されるエネルギー、強度、それらの崩壊確率などの知見が得られる。しかし、約1秒以下の短寿命の核種からの放射線をつくり、検出する施設は複雑でコストがかかるため、世界で稼働している希少同位体研究所は少ない。基礎研究に予算がつきにくくなっているが、予測された同位体の半分以上がまだ未知であり、新しい発見が思いがけない性質の同位体になる可能性も有るため、絶やしてはならない分野のひとつである。 

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Credit: SuN group

 

恒星核合成の未解決問題のひとつは、重元素の合成、すなわち鉄より重い元素生成過程の解明である。 2つの中性子誘起プロセス、s-およびr-プロセスは、これらの核の生成の主な原因と考えられている(上の図)。 しかしながら、これらプロセスによって生成することができない、35個のプロトンが多い原子核のグループが存在する。SuNグループではこのテーマを研究している。

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Credit: FIONA

 

最近の例では115番目の元素モスコビウムと113番目のニホニウムをバークレイ研究所のFIONA(上の写真)が確認している。FIONAは” For the Identification Of Nuclide A”(Aは新元素)の略で、世界中の研究施設で報告される新元素の確認を目的として建設されたサイクロトロンである。2016年(平成28年)6月8日、理化学研究所は113番元素の新名称としてNihonium(元素記号:Nh)と命名する案を発表した。FIONAの確認で正式に認められたことになるが、発表から承認まで2年を要したことになる。

希少同位体は数秒から数十億年の異なる時間量で存在し、異なる種類の放射線を放出して壊変する。その応用範囲は多岐にわたり、例えば煙感知器は、α粒子を放出するアイソトープAm -241を使用している。医療用PETスキャンで一般的に使用されている同位体F-18は健康被害を避けるために短寿命であるが二次電磁放射線はγ線でPETスキャンに使われる。

未知の4,000の同位体が発見を待っていると考えるとニホニウムの発見は長い行程の始まりに思えてくる。しかし現実的には4,000個の同位体をひとつづつ加速器で発見することには、限界があるため効率的な(例えばニホニウム発見につながったコールドフュージョン)方法で、世界各国の核物理研究所が分担して取り組むなどさらなる効率化が求められる。

 

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