X線で投与制御する薬剤ナノバブル(リポソーム)

リポソームは生体中のナノバブルである。薬剤をカプセル化するために薬理学で一般に使用されている。薬物を充填したナノバブル外壁をX線によって破壊し局所的な投与を行う新しい治療法が提案され、初期の試験では、この技術が腸癌細胞を死滅させるのに非常に効率的であることが示されている(Deng et al., Nature Comm. 9:2713, 2018

 

マッコーリー大学の研究チームによれば、リポソームは、細胞膜と同様の材料から作られており、調製が比較的簡単で、適切な薬物で満たされ、その後身体の特定の部分に注入する治療法は、効果的な薬物送達システムとして既に確立されているが、これまでリポソームからの薬物放出の制御法が難しかった。

リポソームは、正確なタイミングで正確なタイミングで正確な薬物負荷を放出できれば、効果的な治療法となる。そこで必要なときにリポソームの崩壊を引き起こすことが必要になる。X線トリガー可能なリポソームでは、オンデマンド薬物放出が可能になる。

 

研究チームは、金ナノ粒子と光感受性分子であるベルテポルフイリンをリポソームの壁に埋め込むことでX線に対する感度を高めたアクチュエータを開発した。X線は、ベルテポルフィンを反応させ、反応性の高い一重項酸素を生成し、リポソーム膜を不安定にし、薬物の放出を引き起こす。

 

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Credit: Nature Comm.

 

リポソームには、化学療法薬であるドキソルビシンが含まれていた。新しいリポソームを用いて実験室環境で癌細胞を死滅させることに成功した。日本では癌治療法の標準療法のひとつである化学療法(キモセラピー)治療は、患者の負担が大きいにも関わらず生存率が低いことが明らかになり化学療法自体が欧米では批判が多い。

この手法は化学療法の効果が疑問視されている中で、投与量を少なくするために局所投与を行うことで副作用を抑えようとするものである。癌治療の主流が標準療法から代替療法にシフトしつつある現在、化学療法の復活の期待がかかるが、潮流を変えるまで行かなくても副作用による死亡率を下げることになるかもしれない。

 

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Credit: Nature Comm.

 

化学療法に使われる薬剤は毒性が強く癌細胞を標的とした薬剤以外は正常細胞にも致命的な影響を及ぼす。このため投与後に癌細胞は減少しても、正常細胞も損傷して生存率が下がる。局所投与で薬剤の投与量が大幅に減少させられるかどうか注目される。

 

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