ピカソの青の時代の絵画に隠された真実〜ポータブルXRFイメージング

ピカソの青の時代とは1901-1904年のピカソが親友であるカサジェマスの自殺に衝撃を受けて青色を基調とした暗い色調の悲しさに溢れる作品を送り出した期間のことである。その青の時代の代表作である"La Miséreuse accroupie"(かがみ込む女)と題された絵画の背景に別の作者の絵画が隠されていることがノースウエスタン大学の研究チームによって明らかになった。

 

1902年に描かれた絵画はオンタリオ画廊の所蔵で青色、灰色、緑という限られた色で描かれた作品である。X線撮影で裏に何か別の絵が描かれていることはわかっていたため、研究チームが開発したポータブルXRFイメージング装置を画廊に持ち込んで、精密なイメージング計測を行った。

 

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Credit: Art Gallery of Ontario (AGO)

 

高度化するX線イメージング

X線イメージングは美術品の鑑定や古生物の非破壊分析に大きな役割を果たしており、この分野ではESRF放射光が際立った成果を見せている。最近は中国で見つかった哺乳類の起源と考えられる小動物(ジュラマイア・シネンシス)の化石の3Dイメージングで、恐竜絶滅後と考えられてきた哺乳類が、1億6千万年前にも生息していた証拠を見出して話題になっている。

下図は放射光を光源とするXRFイメージング測定システム。XRFイメージングでは特性X線のウインドウの計測をメッシュパターンに対して行うため、ビームスポットが空間分解能を決め、またビームフラックスが感度を決める。また分析ソフトウエアも進歩し、後述するハイパースペクトルによって2Dに秘められたレイヤー構造も調べることが可能になった。

 

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Credit: PNAS

 

ハイパースペクトルで明らかになる創作の手順

ポータブルXRFスキャナーは絵画の70%を24時間で計測が可能で、得られたハイパースペクトル(元素ごとの分光イメージと空間位置(X,Y)の多次元イメージ)によって、ピカソの描く手順を明らかにすることができた。

絵画を描いたキャンバスに別の絵画が描かれていたことや途中で構図を変更したことなどが、明らかになったのはハイパースペクトルの情報量が多いことによる。Fe、Crの表面分布はピカソが描いた作品のイメージに重なる。このことは青い時代の特徴であった青色がプラシアンブルー(Fe)を基調にしていたことを示している。

 

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Credit: Northwestern University

 

放射光と相補的なポータブルイメージングシステム

励起X線ビームの感度はフラックスで決まるため高輝度光源が不可欠となる。その点では低エミッタンス放射光源が有利であるが、最近の実験室光源と光学系の改良で、ポータブルXRFシステムの発展も著しい。美術品のように放射光施設に持ち込むことができない場合や、医療診断あるいはフイールドでの計測が不可欠の場合にはポータブル実験系が活躍する。ポータブルXRFには市販品やSEM/XRFがあるが、ノースウエスタン大学はX線イメージングに力を入れており美術専門家と協力して専用のポータブル実験装置を開発した。(下写真)

 

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Credit: Northwestern University

 

 

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