自己修復効果を持つ複合酸化物の放射線損傷

物質の放射線照射では欠陥が生成されるため機会的強度を低下させるとして、原子炉容器の材料にとっては深刻な問題となることが多い。ロスアラモス国立研究所の研究チームは、酸化物への放射線照射が拡散を増加させて欠陥が自己修復する現象を見出した。(Perriot et al., Nature Comm. 8:618, 2018)。

パイクロアなどカチオンとアニオンが含まれる複合酸化物では拡散係数あるいはイオン伝導度が構造的な乱れ、特にカチオン位置の乱れ、に敏感であることが知られている。またカチオンの構造的な乱れは放射線効果が大きいことからパイクロアが核廃棄物の容器に使われる。

研究チームはパイクロアのモデルとしてGd2Ti2O7を放射線によって生じる欠陥が拡散係数とイオン伝導度に与えるμsスケールの影響を分子動力学的手法で調べた。その結果、カチオン拡散は欠陥密度が低い場合は遅いが、構造乱れが一定量を超えると拡散が増大することがわかった。

 

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Credit: Nature Comm.

 

これは異なる種類のカチオンが相互に入れ替わるメカニズムによる。構造乱れの臨界(欠陥密度)を超えるとアンチサイト欠陥が隣り合うため、いわゆるパー子レーションが起こる(下の模式図)。パーコレーションネットワークが一度形成されるとカチオンはこれを伝わって容易に移動できるようになる。このため拡散係数やイオン伝導度が増加することになる。

 

このメカニズムによって放射線量が低いあるいは照射時間が短ければ欠陥が占領に比例して増大するが、積算線量が臨界値を超えると逆にイオンの移動度が増大して自己修復作用が現れる。(下図の横軸は放射線損傷による構造乱れ、縦軸は拡散係数の対数、Aサイト、Bサイトを緑、赤で示してある)。

 

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Credit: Nature Comm.

自己修復作用を考慮したたい放射線材料開発が進むものと期待されている。

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