ロスアトムに協力したクリントン

原子炉ビジネスの最近の傾向は燃料であるウランを原子炉建設と一緒に供給し、核燃料廃棄物の後処理まで一切のサービスを提供する「原子力総合サービス事業」へのシフトである。ウランの採掘から燃料棒に加工する工程は多大な労働力と電力を必要とする。またウラン採掘は限られた国と企業が取り仕切る「閉ざされた市場」である。後処理に至っては原子力先進国ですら保管施設や最終処理施設が宙に浮いたままである。

  

後進国にとっては技術者養成のステップを省ける「ターンキー方式」は一切を任せてお金だけ払えば良いことになるので、現実的にみえるかもしれない。しかしこの図式はそのような総合サービスを供給できる特定企業への依存度が高くなり、経済的・政治的なリスクを伴う。それ以上に「ターンキー方式」の安全性の脆弱性は福島第一の事故で、はっきりしている(注1)。また最大の問題は使用済み核燃料の後処理の責任を逃れて、地球環境悪化を他国に押し付ける利己的な行為にあるだろう。

(注1)福島第一の原子炉群を岸壁を30m以上削って海面に近い位置い設置した理由はターンキー契約で冷却水ポンプのパワーアップが認められなかったためである。また非常用発電機の設置場所も制限されたとされる。設置場所に対応しないとターンキー方式には安全性に支障をきたす。

 

原子力総合サービス事業に最も近いといわれているのがロシア型原発とウラン燃料を供給するロシア国営企業、ロスアトムである。ロスアトムのウラン採掘に対する強みはグローバルウラン採掘会社ウラニウム・ワンを買収し、ウラン世界市場を押さえたことにある。ウラニウム・ワンについては記事を参考にしてもらうことにして、ウラニウム・ワンが、世界のウラン採掘資源を手中に収めた経緯が、話題となっているのでこのコラムで簡単に紹介したい。

現在、米国大統領選で民主党候補に最も近いとされるヒラリー・クリントン議員にふれることになるが、個人的抽象や政治的な意味はない。ビル・クリントンは大統領を退いてからクリントン財団という慈善事業財団をつくった。実際には慈善事業は収益のごく一部であり多種多様な寄付金の受け皿となっている。ロスアトムによるウラニウム・ワンの買収に国務長官であったヒラリー・クリントンの容認が必要で、その謝礼として数百万ドルがクリントン財団に寄付として流れたことが米国内で批判されている。ロスアトムのウラニウム・ワンの買収はプラウダ紙が「ロシアが世界の原子力を支配する第一歩」とかきたてた。

プラウダ紙はロスアトムが北米のウラン採掘能力を得たことで、すでに手中に収めているカザフスタンの採掘権を加えれば、北米から欧州につながる大規模なウラン供給能力を手中にしたとしている。問題はウラニウム・ワンの創始者で資金提供者であったビル・クリントンがロスアトムにウラニウム・ワン売却を容認したことである。売却の容認の見返りに財団に多額の謝礼が渡った。使い道は慈善事業でない財団経費すなわちヒラリー・クリントンの選挙資金である。グローバル企業の利益が国益に優先されたことが問題になっている。写真はウラニウム・ワンの広大な掘削現場。

 

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Source: The New York Times

 

ウラニウム・ワンの買収で、ロスアトムは世界最大のウラン採掘企業となり、米国の20%のウランがロシアの傘下に入ることとなった。ロスアトムはウクライナ、中東の新規原子炉需要を見込んでロシア型原子炉をウラン燃料とセットで売り込む。ロシア型原子炉は加圧水型原子炉(注2)で安全性は西欧諸国の相当する原子炉に匹敵するといわれる。しかし使用済み核燃料の処理までを含むサービスともなれば、地球環境の放射能汚染リスクの増大になりかねない。今後は広域にわたる監視が必要となるため、IAEAの新しい活動分野が生まれそうである。

(注2)VVERシリーズの加圧水型原子炉(PWR)で第三世代のVVER-1000はAPR-1000と同格で、安全性についてもIAEAの指導を受けているため、ほぼ同程度の安全保障がなされているとみてよい。

 

企業が正当な競争によって淘汰されることは資本主義の原動力として認めることはできても個人の企業が国家を動かして世界を支配していくことに危惧を覚える。サウジアラビアがロスアトムかr原子炉を導入し、英国の中国からの原子炉購入もトップセールスで決まったことで明らかなように正当な競争入札で受注できたのは過去の時代になりつつある。国家をあやつる企業が融資とセットで売り込む世界になった。またウラン燃料供給と後処理サービスで総合サービス企業が有利になれば、入札が形式的になる恐れもある。原子力問題は国内の状況だけでなく広く世界情勢をみて近未来のリスクを考えていく必要がある。ニューヨークタイムス紙の記事で、ジャーナリズムが大統領の辞任に追い込んだウオーターゲート事件が頭に浮かぶが、今回は元大統領と次期大統領候補に批判の目が向けられている。クリントンの財団を経由した違法献金についてはドキュメンタリー映画がカンヌ映画祭で公開予定である。

 

 

 

コメント   

# 白虎隊 2016年05月16日 10:35
売国奴ともとれるクリントンに危機感を募らせた結果がトランプ人気なんですかね。いずれにしても一国が原子 炉を支配することだけは避けなくてはならないと思います。

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