ワイドボデイ機ー競争のもたらすもの

 日航機墜落では500人以上の犠牲者が出たが、犠牲者の家族には事故調査報告に納得できない人たちもいる。墜落の原因は垂直尾翼の脱落と油圧系統の破壊であるが、その直接の原因は圧力隔壁の修理ミスによる、破壊とされている。様々な説が飛び交う状況は30年後の今でも変わっていない。ここでは500人という座席数を可能にした、ワイドボデイ機のBoeing 747以降の展開と、新興航空会社の戦略が将来、与えると思われるインパクトについてかきたい。

 

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 ワイドボデイ機のおおざっぱな定義は機内に通路が2列ある機体である。搭乗する際に、誰でも自分の席がどちらにあるか確かめるだろう。それはワイドボデイ機だからだ。ワイドボデイ機の代表が747機で、日本の航空会社は国内線の幹線ルートに採用するにあたって、500席以上のキャパシテイを確保するために、特別の仕様が発注された。日本航空が最初のエアライン(ローンチカスタマーと呼ばれる)で発注したSR-100型以降、300SR、400型機は日本航空、全日空とも国内線に投入し、航空機による大量旅客時代を築くことになった。1987年のJL123便はSR-46という国内線専用の短距離仕様であった。皮肉なことに747機のローンチカスタマーであったパンアメリカン航空は初期型の100型機が爆弾テロによりスコットランドのロッカビーに墜落し、その賠償責任がきっかけとなり、破産に追い込まれた。

 ワイドボデイ機は747機の市場での成功に刺激され、独立していたマクドネルダグラス社のDC-10、MD-11などの3発機やその後、台頭する欧州のエアバス社のA-300、A-310、A-330(注)などが参入した。一方Boeing社は747機の後継機としてエアバス社のA-330、A-340に対抗するべく双発の777機を投入した。

(注)A-320機は座席数150のナローボデイ機である。もともとこのクラスはBoeing-727という日本でもおなじみの尾翼付近に3発のジェットエンジンを持つ機体に競合するべく開発された別系統の機体なので、ここでは割愛する。またA-340機は長距離用にA-330機を4発化した長距離機である。

 

 ここで最近の注目すべき潮流について述べたい。ひとつは米国の航空機メーカー同士が競い合った結果的としてBoeing社が市場をほぼ支配した時代があった。その後、欧州の多国籍企業エアバス社の予想以上の成功により、旅客機市場は2極化した。もしろん中短距離機セグメントにはカナダやブラジルのメーカーが存在し、Private jet市場は別のメーカーがあるのだが、西側の大型旅客機はエアバスとBoeingの独占となっている。欧州国内路線はもちろんであるが、最近米国一辺倒であった日本航空がワイドボデイー最新鋭機787の相次ぐ事故と納期遅れによるリスク回避のためにエアバス社の新型機A-350機の導入に踏み切った。欧州と米国のメーカーの機種の混在は保守が割高になる他、機種ごとにライセンスを取得しなければならないパイロット育成においても不利であるが、大手エアラインはあえてリスク分散のために複数メーカーの機種を混在させている。いずれにしても米国メーカーの独占時代は終焉を迎え、国際間の競争が激化した。その結果、エアラインの発言力が強くなった。

 そのひとつの結果が開発段階で(大口購入の)エアラインが、新しい機種でもその仕様に新鮮さがないと顧客にアピールできないため、注文をつけることが多くなった。またエアライン各社の微妙に異なる仕様に対応せざるを得なくなり、従来の独占時代には考えられないほど、機種を増やすこととなった。1社が1製品という今で言えばiphone商法は通用しなくなった。話はそれるがapple社が2014年9月に発売を予定しているiphone6では、画面のサイズが異なる2機種を始めて市場にだすのと似ている。顧客の要求が多様化したため顧客の要求に対応せざるを得なくなったのである。

 

Boeing 777 above clouds crop

 

 777型機も当初は767-Xとして767機の発展として開発していたが、コックピットの仕様が古く、ユナイテッド航空と日本航空が仕様拒否をした。エアバス社のA-350機もA-330に比べて航空機としての性能・経済性は大幅に改善されているにも関わらず、ライバル機787の影にかくれて受注は伸び悩んでいたが、設計を1からやり直してエクストラワイドボデイ機A350 XWBとすると、787の故障に助けられ急激に発注が伸びた。座席数350は787機と重なりこのクラスで互角以上の競争が可能になり、一回り大型のワイドボデイ機777にも充分対抗できることとなった。どのセグメントにも競合機種が存在することは顧客側が主導権を握り、良い製品を選べる、ことになったが同時にメーカー側の負担も増大し、受注数が利益に直結することでもあり、競争が激化した。

 さて熾烈なセグメントごとの競争により活発化した航空業界であるが、もうひとつの流れに注目したい。ワイドボデイー機の限界を打ち破るには2階建てにすることが考えられる。実際、2階建て構想の歴史は古く、Boeing 747機の設計当初には2階建ての構想があった。理由は胴体が円形だとワイドボデイ機のような大型機では客室の上には空洞ができて、無駄だからである。華々しくデビューしたA-380機のローンチカスタマーはシンガポール航空である。フランクフルトアルゲマイネと名がつけられたルフトハンザ航空の機体に搭乗した時のレポートは別にかいた。双発機の777と比べて重量の大きさによる安定感は格別のものがあり、エアバス社が開発に時間と経費を惜しみなくつぎ込んだ機体には各部に新機構があって、次世代の旅客機として印象深いものであった。

 

A380-plan

 

 現在はA-380の採用/不採用でエアラインが2分されている。日本ではスカイマークが発注した6機を契約破棄し、普通は返金されるべき前払い金の260億に加えて、違約金700億、合計で約1000億もの負債を背負ったことは記憶に新しい。A-380の機体価格は350億とされる。受注はルフトハンザ、エールフランス、ブリテイッシュエアウエイズを除くとシンガポール、エミレーツ、カンタス、大韓、中国南方、マレーシア、タイ、アシアナなど大手でないエアラインが目立つ。特筆すべきはエミレーツ航空の100機で、すでに50機目が就航している。中東系のエアラインには他にカタール航空、エテイハト航空が御三家を作っている。

 これらの新興エアラインは潤沢な財源を持ち、これまでにないフリート増強をはかっているが、それぞれにドバイ、アブダビ、ドーハという3つのハブ空港を持ち、豊富な機材で大量の旅客を取り込もうと必至だ。中途のハブ空港を使うと直行便に比べて飛行時間が長くなるが、ハブ空港の快適性とモールや娯楽施設等の付加価値を高める作戦が功を奏するのか。

 しかし大型機の採用で常に最前線にいた日本のエアラインはA-380を採用しない路線である。日本の大手エアラインはエアバス導入に消極的であったが、ロッキード事件に代表されるように米国メーカーから機材を導入するのが習わしになっていた感がある。これまでは競合機がなかったから、不思議ではないが、エアバスとBoeingが2大勢力となった現在、選定作業をリセットする必要があるだろう。その意味で今後の展開が注目される。これまでの米国一辺倒の調達時代は終焉を迎えた。時代の変化をみて賢い判断が必要である。

 

 しかしそれだけではない。中東勢の躍進は機材だけでなく本格的なハブ空港とセットで考える戦略によるところが大きい。関空と伊丹が2兆円で売却を待っている。そろそろ成田と羽田をどうやってハブ空港に仕上げるのか考えるべき時が来たようだ。確かな事は米国のエアラインビジネスの優位性はメーカーの主導権とともに敗退したことだろう。大企業が一方的に顧客に売りつけるスタイルは過去の物だ。

 

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