F22のあっけない最後-ラプターがゾンビになる日

 読者の皆さんは米国が誇る最新鋭のステルス戦闘機F22 "ラプター"をご存知と思う。ラプターはロッキードマーテイン社とボーイング社が共同で製作してYF22として試作機コンペにおいて、対抗馬のノースロップ社のYF23(注)と激しい競争の末に、より先進的で性能的にも優れていたYF23を差し置いて採用された。軍用機の採用には試作機がつくられるのはこれまでのやり方だが、米政府はYF22とYF23の試作機製作に38億ドルを費やした。写真は世界一美しい戦闘機とされる悲運の傑作機YF23。

  

YF-23 top view

 

(注) コンペで技術的優位性が必ずしも勝つとは限らない。YF23はあらゆる項目でYF22に勝っていたが、大統領(軍事産業)との結びつきが弱かったので、勝ち目はなかったと考えられている。設計最初からステルス性を意識して考えられたYF23は斬新な設計でかつ性能的にも選定されるべき機種であった。

 

 ステルス性能が世界の同種の戦闘機中で最も優れているばかりではなく、武器やレーダーなどの電子機器においても(YF23を除けば)最先端にあるので、自衛隊も現役を退くF4の後継機として導入を目指した。しかし米国議会は輸出不可の決議をしたため、一歩性能が劣るがライセンス生産が可能なF35を導入する計画である。F22はすでに187機が生産され2005年から実戦配備が進められている。

 しかし米国内雇用の観点から機体の生産を44州が関わることとしたため、生産コストが増大した。というより当初に不当に安く見積もっていた(1.5億ドル)。購入費用は現在では一機3.5億ドルに膨れ上がったた。そのため計画の縮小が叫ばれていたが、ついに大統領が生産中止決議に署名した。このことでラプター(下の写真)はゾンビ化したと揶揄されている。

 

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 生産コスト以外にもこれまでの稼働により、様々な問題が見つかっている。例えば1時間の飛行に対して30時間以上のメンテナンスが必要であること。また平均1.7時間ごとに(稼働ができなくなるほどの)重大な故障が起きること。このため配備計画の縮小でなく中止となった。米国財政の破綻に軍備予算と戦争が大きく影響を及ぼしてきたが、背には腹は替えられなかったのだろう。

 財政的な問題はあるにせよ国防省が中止に抵抗しなかったのは、ステルス性においては先進的であるものの、戦略攻撃を主眼とした設計当時の思想が冷戦の終結で陳腐化したこともあるようだ。一方冷戦終結後の局地戦は増大した。米国を凌駕していたロシアの仮想的な戦闘機と局地戦では有視界接近戦を行うことが皮肉なことに多くなった。その場合はステルス性は意味を持たない。絶対的な運動性能がものをいうのだ。

 設計思想が古いとたとえ最新技術を投入したとしても短命に終わる。複雑化、高度化により、全ての機器の開発に要する期間は長くなる一方で、時代の変化がめまぐるしく陳腐化の速度が増している。先を読んで開発すべきだがそうするとリスクが高くなる。何事もスピードが要求される反面、意思決定の先進性と正確さが要求されているようだ。

 現在、三菱重工業が防衛庁と協力して開発を進めているステルス戦闘機「心神」は、小型軽量の精神においてはラプターより先進的であり、コストでも有利である。軍事技術の輸出が可能になり集団自衛権の容認など、知らないではすませられない時代だが、フェーズドアレイ技術やステルス塗装などは国産技術が世界の先端にあることを認識しておかないといけない。

 

(フォローアップ2014.8.2)

 最近行われた模擬空中戦の結果、Su-27, Su-30, Su35の仮想敵に対して、日米のF22とF35チームは惨敗を喫した。ステルス性能と引き換えに運動性能を犠牲にしていたことにより、当初の目標であった接近空中戦でスホーイ機に及ばなかったのである。もともとステルス性は気づかれないように敵国に侵入し、迎撃機を遠距離からミサイルで撃ち落とす、先制攻撃に基づいているが、現在必要とされているのは戦略攻撃でなく、局地戦で制空権を確保することなので、そうした目的には運動性能が要求される。つまりステルス機(第5世代)は時代遅れなのだ。

 

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