希土類マグネット

読者の中には脳のMRIの検査を受けた方もいるであろう。ただでさえ不安な患者が予約しても検査が1月先だと待つ身がつらい。なんとか早く検査を受けさせ て!と叫びたいであろう。強磁場医療機器には強力な磁石が用いられる。時計やペースメーカーあるいは流行のTatooでさえ悲惨な結果になるので要注意。

 写真は脳のMRI断面である。( Image by Harry Sieplinga, HMS/Getty Images http://news.nationalgeographic.com/news/2011/11/111207-hypnosis-hallucinate-color-psychology-brain-science-health/

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希土類を使う永久磁石には、サマリウム・コバルト(SmCo)磁石と、ネオジウム(NdFeB)磁石がある。最近ではフェライトにLaCoを 添加することで保磁力・耐保磁力温度があげられるなど、希土類は磁石には必要不可欠な元素であることがわかる。永久磁石は電子が持つスピン(地球の磁極に 相当するようなものと考えるとわかりやすい)の向きが揃うことで磁化する。そのため、鉄に代表されるようにスピンが揃い揃った状態を保ち続けられる金属は 磁化するが、アルミニウムのようにスピンが揃った状態を保持できない金属は磁化しない。また、磁化した金属でも原子が回転運動でき2010年の時点で希土類の輸入の90% を中国に頼っており、尖閣諸島沖での中国漁船と海上自衛隊衝突事故において中国政府の報復ではないかと推測されている輸出停止措置となったことは記憶に新 しい。とりわけ、希土類は高磁束・高保磁永久磁石の原材料として近代産業には欠かす事ができない必須の金属だ。国内には1年間の使用量程度のストックがあ るとされるが、長期的には希土類に変わる元素、リサイクル、新たなる産出国を探す必要がある。限られた資源を公平に分配できず人類は絶えず争いを繰り返し て来たが、金同様に積極的なリサイクルが望まれている。たいてい磁石はスクラップとして扱われるので溶融状態で他金属と同様に分別精製すべきなのだがコス トでできないのが現実。る温度になれば、スピン の向きが揃わなくなり、磁力が消えてしまうため、保磁できる温度も重要な要素となっている。

 

モー ターは電磁石の外側に永久磁石が配置され、電磁石の極性を変えることで回転運動をつくりだす。通常のモーターの電磁石は銅線のコイルを使っているため、電 流をコイルに流すことで、熱(ジュール熱)が発生する。このため電磁石で発生した熱で永久磁石が単なる非磁性合金になってしまっては利用価値がなくなって しまう。ジュール熱は銅線の抵抗に比例しているので、大型のモーターは熱発生量も増えることから、高効率モーターを作るには永久磁石の保磁できる温度は高 くする必要がある。電磁石を超電導線にすれば、超電導線は電気抵抗がゼロになるのでジュール熱は発生しない。これを利用したのが、リニアモーターカーであ るが、ハイブリッドカーや電気自動車ではコストがネックとなる。加速器分野では我が国の高品質磁石は重要なデバイスを作り出し、高い評価を得ている。Spring-8に設置されたXFELのアンジュレータにも強磁界電磁石として使われている。加速器科学になくてはならない物質なのである。

 

回転運動のモーターを直線上に広げたものがリニアモーターである。希土類の高温超電導体はLa, Yが使われていたが、2010年現在での最高超電導転移温度は160℃で、HgBa2Ca2Cu3Oyである。臨界温度が120℃ 以上の高温超電導体には希土類を含まないことから、高温超電導材分野で希土類を使う割合が減っている。希土類を使わない永久磁石の研究も帝人・東北大学な どで進んでおり、磁石における脱希土類化が加速している。一方、液晶のカラーフィルター蛍光材はまだ希土類依存度が大きい。しかし、量子ドットを利用する ことで発光波長を変えられることから、カラーフィルターの色素も量子ドット化することで対応できる可能性もあり日本において脱希土類はさらに進む可能性が 高い。

 

限られた資源を独占するのは愚かである。それを利用して付加価値をつけたハイテクの製品をつくることができる国に使わせる方が人類全体の益になることはいうまでもない。自由貿易が保証さればよいだけだ。いくらなんでもそのくらいは知恵があるだろう。

コメント   

# 風見鶏 2013年07月01日 15:16
MRIの前に必ずきかれる質問。思うにふたつ意味があるんではないかと思います。

ひとつは昔の入れ墨(現代のタトーとは意味も材料も違うのである)の顔料にプラシアンブルーに代表される鉄酸化物、錯体を使っていた。

入れ墨の多くは青入りであった。現在の材料科学ではフェリ磁性や恐ろしい磁場効果が想定されるフェロ磁性まで、さまざまな磁性を持つ材料が開発されている。

最近はタトーを入れてみてから嫌気がさして除去したいといってくる例も増えたため、長期安定性よりむしろ拒否反応を起こさずに除去しやすいものが好まれるようになった。

本題に戻ると最初はフェロ磁性をもつ昔の顔料を使った伝統的な入れ墨をしてやけどを負ったことから、入れ墨は一般的に危険、というような誤解?が広まった。

第二に入れ墨が見え隠れする患者が病院内を歩き回っていたらどうだろうか。入れ墨の人権を否定するものではないが、患者の多くは目を合わせたくない。

病院もなるべくその系の人たちとかかわり合いたくないので、入れ墨はMRI検査スルー、ということにしたかった(のだろう)。

ある温泉で隣に座った入れ墨が背中一面にはいった男と目が合った。きけば入れ墨は祭りのためにいれたもので、毎年の祭りが生き甲斐だといって笑った。

心地よい秋風が頭の上を吹いてほてった体が心地よい。人間は外見で判断してはいけない、と教わった自分が恥ずかしくなった。
# Tadashi 2013年07月19日 10:38
磁石の材料を独り占めして沈んでいくより、技術のある国に売った方が、病気が治って助かる人民が喜ぶと思う 。石油もなくなる前に化学製品で誰もが利益を得られるように、技術のある国に使わせた方がいい。
# Morizo 2013年07月19日 10:41
もう地球上の資産は1%の人たちが勝手に使う時代じゃない。99%の人たちは彼らより欲がないだけだから有 効に使える。
# Keiko 2013年07月19日 10:43
磁石の原料を押さえてもつくれない。宝の持ち腐れ。猫に小判。あの国に磁石原料か。
# Keiko 2013年08月02日 07:17
リサイクル法律つくって希土類(と貴金属)の繰り返し利用すれば、輸入量を減らせる。リサイクル技術を世界 に輸出すればもう中国は必要なくなるのでは。
# Takashi(兄) 2013年08月11日 10:12
中国から日本へのレアアース(希土類)の輸出量は減少、日本は長年にわたり中国にとって最大のレアアース輸出先だったが、2位になった。

日本企業はオーストラリアなどからのレアアース調達を本格化、中国企業は日本からの受注減の影響で業績が悪化し、生産が停止する企業も出るなど苦境に陥っている。

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