半導体メモリーの原理ー限界が新しい展開につながる

 日本のハイテク産業の代表であった半導体。世界シェアで覇権を争った時代は気がつけば遠い昔のことである。環境の変化に対応できなかった代償は大きく、いまは見る影もない。コモデテイ化すれば価格競争に陥り、「売れば売るほど損をする」典型的なデフレ産業となる。ここでもう一度基本に立ち返りメモリの原理について考察してみよう。克服すべき問題(死の谷)がある場合、谷を渡る新しいアイデアが生まれるかも知れない。

 

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 一般的なメモリの原理は上に上げたように電圧印可によるゲートのオンオフ(スイッチング)動作である。半導体メモリには揮発性(DRAMを代表とする電源を切るとデータが消えてしまう)と不揮発性(Flashを代表とする電源を切ってもデータが残る)がある。不揮発性メモリではNOR型とNAND型がある。NOR型は論理和(OR)と否定(NOT)から成り立っており、NOR回路だけで、

・ NOT (A)=(A) NOR (A)=1
・ (A) AND (B)=((A) NOR (A) NOR ((B) NOR (B))=0
・ (A) OR (B)=((A) NOR (B)) NOR ((A) NOR (B))=0
のように、NOT, AND, ORがあらわせる。

一方、NAND型は理論積(AND)と否定(NOT)で、
・ NOT (A)=(A) NAND (A)=0
・ (A) AND (B)=((A) NAND (B) NAND ((A) NOR (B))=1
・ (A) OR (B)=((A) NAND (A)) NAND ((B) NAND (B))=0
であらわせる。

NOR型、NAND型は1回路で済むことからメモリとして利用されている。NOR型はメモリセルが並列に接続されていることから、ランダムアクセスが可能で読み出しが早く、ECC(エラー訂正)が必要ないためデータの信頼性が高い反面、書き込み速度が遅く、デバイスの構造上集積化が困難で、データ消去時に高い電圧が必要となる。

 NAND型は、SLC(Single Level Cell:1ビット)と、MLC(Multi Level Cell:2ビット)が存在する。NAND型の特徴として、集積化・低消費電力化が可能な反面、ECC処理を行う必要がありデータの信頼性に劣る。エラーは、書き込み時に過剰電子が入り込むことや、書き込み・消去による劣化によるものと考えられている。また、NAND型では上書きが出来ず、1ブロック内に書き込まれたデータを読み出し、外部で編集してからデータの無いブロックに書き込むという方法を取る必要がある。また、フラッシュメモリはNOR型、NAND型とも書き込み・消去を繰り返すことで絶縁層が破壊されることから、書き込み回数に制限があり、永久保存には向かない。

 NAND型フラッシュメモリはデジタルカメラの高画素化に伴うニーズからデータ容量が増え、SDカードタイプでも64GBまで製品化されている。そのため、携帯端末・PCの記録媒体としてHDD(Hard Disk Drive)に変わり、SSD(Solid State Drive)を採用する動きが加速している。最新のHDDは加速度センサーが内臓されており、衝撃によるヘッドクラッシュを防ぎデータの保護性が増してきているが、依然として衝撃には弱い。フラッシュメモリは衝撃に強く、軽い反面、特にNAND型ではデータエラーを起こしやすく、HDDに比べデータ復旧がしにくい。NAND型フラッシュメモリーのスケーリング則と露光技術の進歩を以下に示した。

 

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 すべての製品において言えることであるが、製品の多様化してきた今日では消費者は各製品の長所・短所を把握して使い分けることが重要になってきているのではないだろうか。最近では、磁気を利用した不揮発性メモリMRMA(電荷による記録媒体フラッシュに対して、MRMA:magnetic ramdom access memoryは磁束の向きで記録する)の研究も進んできており、電気ノイズの多い使用に適す等、使われる製品によって使い分けされるであろう。

 揮発性メモリは以前は半導体産業の景気を左右する存在であった。揮発性メモリの生産が中国・東南アジアにシフトしたことで、価格が一気に下がり、半導体不況の引き金になることは無くなった。これにより、採算性が低くなったため揮発性メモリ生産から日本の企業は撤退し、現在では使用分野の拡大が図れる不揮発性メモリへと生産が変わってきている。揮発性メモリはDRAM(Dynamic Random Access Memory), SRAM(Static Random Access Memory), FeRAM(Ferroelectric RAM), MRAM(Magnetoresistive RAM), ReRAM(Resistive RAM), PRAM(Phase Change RAM)など存在するが、一般的に使われているのがDRAM とSRAMである。

 DRAMはPCでは1次メモリとして使われ、SRAMは2次キャッシュメモリとして利用される。違いは、DRAMが電荷によるメモリであるため、自然放電してしまうことにより電源が入っていても一定時間でデータが消滅してしまうが、SRAMはフリップフロップ回路が内在されているため、電源を切らない限りデータが消えることはない。RAMも微細化により集積度を増すだけでなく、消費電力を下げたり、ロジックや製造工程を減らすなど生産性・コストを下げたDRAM/SRAMの派生型も多数出てきている。最近ではDRAMの派生型としてSOI(Silicon on Insulator)基板を用いたZRAMが取り上げられているように、システムやアプリケーションの多機能化で大容量RAMが必要になってきたため、消費電力の大きいDRAMの改良が急務になってきている。SOI技術もリークの電流削減から低消費電力化に有効とされているが、SOI基板自体が高コストのため高集積化によりコストの削減を狙っている。

 量子デバイスやスピン電流デバイスは未来技術だがその前にやれる技術もある。メモリと抵抗の性質を持ったmemoristor(memory+resistor)デバイスがそれだ。電気の供給を受けなくともデータを保存でき、従来のフラッシュメモリと比べ、消費電力が少なく、高速での動作が可能になるというMemoristorでは電流履歴が抵抗として残るのでResistive random access memory (ReRAM)への応用が考えられる。HPを始めとする企業が研究開発に余念がない近未来メモリーである。

 

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 半導体製品は、物理限界と考えられる領域まで微細化が進んできた。半導体が発明されて半世紀以上経った今日、更なる高速化・低消費電力化・高集積化にはトランジスター概念からの脱却と、半導体アーキテクチャーを一新させることが必要な時期に来ているように思える。熱を発生させず、高速動作させるには光デバイスやスピン電流デバイスが有効となる。これらの最先端テクノロジーも行き着く先はコモデテイ化でいつかはコンビニの店頭に並ぶ時代になるであろう。

 

 ジョブスが封筒から取り出したMacbookAirはapple発のSSDベースPCであるが、SSDは小型軽量化に役立つばかりでなくOS起動の速度、対衝撃性など多くの利点がある。今後もSSDベースの電子デバイスは発展が期待されている。ジョブスの得意そうな表情は印象的だが、実際に13インチ版を手のひらで支えるには少し無理がある。さらに軽量化したSSDベースのPCを期待したい。筆者の知る限りだが、生産終了したSonyのvaio type PはSSDベースのWindows PCとしてその軽量さには驚かされた。ジョブスとSonyが手を組めば画期的なPCが生まれたのではないだろうか。Sony経営陣は乗っ取りを恐れたのだろうがvaio部門を身売りするならappleと手を組んで、別会社にした方がどれだけ貢献できたかはかり知れない。せっかくの好機を逃す能天気さと想定外にうろたえる、これらの体質は自然淘汰されてもしかるべきである。

 

SteveJobsMacbookAir

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