位相マスクによる4D超解像顕微鏡

ライス大学の研究チームは、回折限界を超えた空間分解能を持つ超解像顕微鏡の3D空間情報を時間の経過に伴う分子運動を観察する時間軸を加えた4D超解像顕微鏡を開発した(Wang et al., Optics Express 27, 3799, 2019)。

 

超超解像顕微鏡(SRM)

超解像顕微鏡(SRM)とは、従来の光学顕微鏡が持つ回折限界を超えた分解能を発揮する光学的手法である。2014年ノーベル化学賞が異なる手法で実現した3氏が授与している。超超解像顕微鏡にはいくつか方法があるが、下図はスタンフォード大学の研究チームが開発した超超解像顕微鏡で、低バックグラウンド3D超局所化および3D超解像のため傾斜光シート照明と広がり関数(point spread function, PSF)と呼ばれる物体平面の個々のインパルス関数で表現された像を組み合わせたもの。後者はここで紹介するライス大学の研究チームの研究でも使われている。

 

41467 2017 2563 Fig1 HTML

Credit: Nature Comm. 

 

顕微鏡画像の4D化

顕微鏡画像の4D化のために研究チームは顕微鏡のカメラで捉えた画像の光の位相を操作する透明で回転する特殊な位相マスクを作成した。位相情報には、空間内の分子の3D情報と、カメラの視野内で分子がどのように振る舞うかの4D情報が含まれている。

位相マスクで顕微鏡画像から、回折限界以下の物体について回折限界を超えた情報を取り出すことができる。研究チームが開発したアルゴリズムによって分子の画像を撮影して分子の深さと移動速度を決定できる。これにより分子が3次元空間の位置情報だけでなく、各分子の時間情報(タイムスタンプ)が得られる。

 

srep30826 f1

Credit: Optics Express

 

この手法の鍵となるのはアルゴリズムで点広がり関数の形状を変更し、最適な位相マスクを設計する技術である。位相マスクで光を操作して、さまざまな深さに合わせてパターンを最適化することである。研究チームが開発した高速で最小値に収束するGauss-Newtonアルゴリズムが、時間軸および3D空間情報を同時に符号化するストレッチローブ位相マスクを設計するために使用された。ストレッチローブ位相マスクは、マルチレベル光リソグラフィで作成された。

これまでは時間とともに2D対象の時間変化を観測できていたが、この研究開発で3D空間情報の時間変化を観察することができるようになった。広視野蛍光顕微鏡は、多くの分野、特に細胞生物学と医用イメージングで使用されている。新しい蛍光タグの開発や新しいハードウェアの改良と比較しても、顕微鏡内で光の位相を操作することが、空間と時間の分解能を向上させるために有力である。研究チームが開発した手法は柔軟性があり、生きている癌細胞内のプロセスを分析するアプリケーションに適している。

 

download copy copy copy copy copy copy

Credit: Landes Research Group/Rice University

上図は位相マスクを通してダブルローブとして観測された単一分子の点像分布関数は分子の3D空間情報を示す。右側のローブ間の距離はそれらに分子の奥行きを与える。

You have no rights to post comments

hitachihightec

hitachihightec science

Copyright© 2013.   放射線ホライゾン rad-horizon.net   All Rights Reserved.