分子に覆われたナノ粒子の高分解能STMイメージング

フィンランドのユヴァスキュラ大学の研究チームの研究により、走査型トンネリング顕微鏡(STM)を使用することにより、表面を保護する分子を認識できる、銀などの金属ナノ粒子の分子で覆われた表面構造の高い解像度の画像化が可能になった。

 

現在、ナノ粒子の表面構造を原子の分解能でのイメージングは、それらの構造の化学的性質、分子相互作用、およびそれらの環境における粒子の機能を理解する上で不可欠となっている。ナノメートルレベルのイメージング技術の最も一般的なものは走査トンネル顕微鏡法(STM)、および原子間力顕微鏡法(AFM)である。

しかし、画像化における高分解能を達成することは、例えば、対象となる物体表面の曲率、すなわちナノ粒子の表面が走査先端部の曲率と同じオーダーであるため、非常に困難である。また計測そのものが、分子の熱運動に影響を及ぼす。

 

研究チームは、銀ナノ粒子をモデルとした。粒子の金属コアは374個の銀原子を有し、その表面は113個のt-ブチル - ベンゼンチオール(TBTT)分子によって保護されている。 TBBTは、その末端に3つの別個の炭素基を有する分子である。粒子表面には合計339個のグループがある銀ナノ粒子試料をSTM実験で低温で画像化すると、トンネル電流で明瞭な変調が観察される。個々のTBBT分子を平坦な表面上に結像させた場合にも、同様の変調が認められた(Zhou et al., Nature Comm. 9: 2948, 2018)。

 

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Credit: Nature Comm.

 

今回の結果は、ナノ粒子表面構造のSTMイメージングが初めて分子の個々の部分を観測できることを示すものである。ナノ粒子の構造はよく知られているため、シミュレーションが可能であり、1665の異なる配向の銀粒子のシミュレートSTM画像を計算し、パターン認識アルゴリズムを開発して、どのシミュレーション画像が実験データに最も適合するかを決定した。

研究チームが行った密度汎関数理論(DFT)に基づいたシミュレーションによれば、TBBT分子の3つの炭素グループのトンネル電流分布の画像が、観測されることを示し、これは実験の電流最大値に対応することがわかった、すなわち分子解像度が観測されることがわかった。一方、シミュレーションは、分子の熱運動が非常に高く、個々の炭素基の現在の最大値がバックグラウンドに混ざり合うので、正確なSTM測定が室温で不可能であることも予測した。以下の図の(a)、(b)、(c)はTBBT分子の液体He温度、液体窒素温度、室温におけるSTMトポグラフイ画像である。

 

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Credit: Nature Comm.

 

将来、パターン認識アルゴリズムと機械学習に基づく人工知能は、ナノ構造のイメージの解釈に不可欠になると考えられている。原子イメージングに限らず、構造研究のほとんどがビッグデータ(データベース)化され、学習機能をもつAIソフフトが活用されることによって、構造決定はより高速、正確に行われるようになるだろう。

 

 

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