放射光って何?

 放射光(Synchrotron Radiation)は光速に近い速度で運動する電子や陽電子が磁場の力で曲げられたときに、軌道接線方向に放出される光である。宇宙空間を除けば、放射光は人間が創り出した人工の光である。

 ほんの約半世紀の間に放射光科学は飛躍的に発展し光に関係する多くの分野でそれまでできなかった応用研究を成し遂げた。新しいアイデアや発明が生み出されるのには時間かかるが、いったん価値や能力が広く認められると瞬時に普及しついには技術革新に到る。加速器内を周回する電子から発生するシンクロトロン放射は真空を悪化させる「厄介者」として一部の知られていたが、他に光源の乏しい波長領域の分光学への試行的な応用を契機として光源の持つ能力が広く認識されることとなった。放射光の波長(エネルギー)と地球上のスケールを比較したのが下図である。


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 放射光の最初の応用はそれまで適当な光源がなかった「暗黒の真空紫外領域」の光源としてであった。放射光のもつ性質、指向性、波長連続性、偏光性、パルス性などの優れた特徴を持つ。原子核・高エネルギー物理のリングを借用した初期の放射光実験(第1世代)を創生期とし、専用の蓄積リング(第2世代)が相次いで建設され、多くの専門分野に分かれて本格的な応用研究が始まった。安定で低エミッタンスのリングの共同利用が始まると利用者数は急増した。現在では挿入光源を中心とする高輝度蓄積リング(第3世代と呼ばれる)が主流である。下図に発生原理を模式的に示す。

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 放射光の話題は新たに追加されるカテゴリの放射光/加速器科学に譲る。写真は代表的な第2世代の施設SSRLである。サンフランシスコ空港に着陸する東部からの国内線は線形加速器、SLAC上空をとぶ。一般の乗客は世界最長の線形加速器を目にすることになる。SLACはアリゾナのクレーターに並んで飛行機の窓からみえる名所なのでわざわざアナウンスがあるからだ。SLACを入射器とするSSRLではほとんど全ての放射光科学のパイオニア的な実験が行われた。筆者が訪れて実験をした最初の放射光施設でもあったが、安定な第2世代以降の放射光に比べると1970年代後半のSSRLはビームがたびたびダウンした。またSLAC自身も主にソフトの問題でダウンしいったんダウンすると4-5時間かかるので、モーテルに戻って仮眠をとっていた。航空機で言うとレシプロ機であり過程(風景)を楽しめる旅のようである。あっという間に目的地に着くジェット機のような第3世代と違っていま思うと懐かしい気もする。

 

SSRL-dusk

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