ジェット気流と放射性物質の拡散

 日本からヨーロッパに行く便と帰国する便の所要時間を比べると、たいていの場合、帰国便が早く着く。また帰国時間に出迎えに行くともう飛行機が着いて出迎えるはずの人が到着ロビーにいたりする。たいてい機長が得意げに機内で予定時刻より到着が早くなる事をアナウンスする。最初からわかっていたかのように常にそうしている。それなら最初から想定してスケジュールをたててくれよ、といいたいところだが、これは何故か?機長ではなくジェット気流のおかげである。

 

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 ジェット気流とは南緯30度から60度付近地球の対流圏上層に位置する強い偏西風のことである。これはまた天気の変動が常に西から東へ移動して行く原因でもあり我々の日常生活に深いつながりを持っている。制限された空間、例えばパイプの中を流れる流体の速度は一定だが、ジェット気流は流れる方向に沿って中央が最も早い。したがって恩恵にあずかるにはジェット気流の中心にのるのが最も効率的だ。ジェット旅客機の巡航高度は36000ft(約10800m)であるが、中心の高度はその8倍ほどなので、まだまだフルに恩恵を受けている訳ではない。


 ジェット気流は壮大なスケールだ。長さは数1000kmに及び、厚さ数km、幅100km程度で、日本付近とアメリカ大陸東部では風速は30m/sぐらいで中には100m/s近くに達するとされる。時速100kmで毎秒28mだからこれは大変な速度である。これが放射性物質の運搬に一役買っている事をご存知だろうか。

 

 

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 チェルノブイリの原子炉爆発で空気中に舞い上がった放射性物質は粉々に砕け細かいダストとなり上空へ到達した後、ジェット気流によって東に運ばれた。日本への影響も大きいとされる。一方、九州大応用力学研究所の竹村俊彦准教授らが、大気中の微粒子の動きをシミュレーションし、水素爆発などで福島第1原発から出た放射性物質の動きを再現した結果、放射性物質は、3月14〜15日に東日本を通過した低気圧の上昇気流で上空約5キロに舞い上がり、ジェット気流に乗って1日約3000キロを移動し、17日に北米大陸の西岸に到達し、アイスランドなどを経由して23日にはスイスにまで達したという。拡散による影響に比べてずっと早い影響を世界に及ぼすということだ。


 EMPを引き起こす高度100km - 数100kmの高層大気圏における核爆発においては、ジェット気流の高度の10倍以上の高高度なので、影響は少ないと考えるかもしれないが、大気が非常に希薄であり落下の抵抗を受けないので粉塵はやがてジェット気流の影響を受ける高度まで長い時間をかけて到達する。こうしてみると地球環境は全てが影響を持っていて、どこかで閉じた系ではないことが明らかであろう。皆さんも飛行機に乗ったらこのことを考えてみて欲しい。

 

 

 

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