オゾン層とUV照射量の関係〜人類が自然環境保護に成功した例

オゾン層に穴が開くオゾンホールが局地に形成されつつあり、オゾン層が弱まっていることと地球上のUV照射量が相関関係にあることは確かである。UV照射量が増えれば皮膚癌の発生率も増える。温室効果ガスの中でCO2ばかりが話題になるが、オゾン層の将来の予測はどうなのか気になるのではないだろうか。

 

避けられた地球の危機

Newmanたちの解析(Atmospheric Chemistry and Physics, 9(6), 2113-2128.)によるとオゾン層の密度が減り続ける一方で食い止めることができないとされる。地球上の滞留、日射、大気中の化学反応、温度変化と風など成層圏のオゾン層を記述するすべてのパラメーターを含んだ地球気候モデルによる大型計算機でも数カ月かかる。

気候モデルのシミュレーション結果は、"World avoided"(注1)と呼ばれる。オゾンが分解にはクロフルオロカーボン(CFC)との反応によるが、モデルでは1980年に導入された使用禁止協定以前の数値である毎年3%の増加を仮定し、1975年から2065年までのオゾン全量の時間変化を予測した。

(注1)CFC排出規制がない場合の地球。CFC排出規制がなければこうなっていたという仮想的な地球を意味する。

 

シミュレーションの結果は深刻な結果となり2020年までに17%のオゾンが失われていたはずだった。極地のオゾンホールは次第に拡大を続け2040年にはオゾンホールが世界中に広がることになった。UV照射強度はUV指数として知られているがUV指数が中緯度地域で夏の昼過ぎには15(注2)に達した。

(注2)通年の平均の夏の午後のUV指数値は約10である。

 

projected ozone

projected uv index

 

Source: NASA

 

上の図はシミュレーション結果によるオゾン量(上)とUV指数(下)を規制後の未来予測(Reference Future)と比較したもの。2050年には熱帯地方上空の成層圏のオゾンはほぼ消失する。現在、南極上空で起こっているオゾン層破壊が熱帯地方上空でも起こることになる。地表への影響は日射量が大きいこの地域では極めて大きく、UV指数が急激に増加する。

熱帯地域の成層圏が冷却されて雲ができる結果は一見異常な現象だが、オゾンが消失するとUVを吸収して大気が暖められるメカニズムが働かないので、冷却が起こることは理解できる。つまりオゾン層の消失で成層圏は冷却されることが重要な結果である。

 

熱帯地方では暖められた空気が上昇し、上空で移動して極地で冷却されて地上に降りてくる大気のグローバルな循環が起こっている。しかしオゾン層がなければ熱帯地方の上空で冷却されるので移動せずに冷えた空気が降りてくるので熱帯の気温が低下する。

成層圏の雲は極地で温暖な空気が冷却されて生じるが、オゾンがなければ熱帯でも成層圏に雲が発生する。2065年にはオゾン量は1970年代より67%減少するはずであった。UV照射量はこのため10,000倍となり屋外に出ることは死を意味する。

 

ozone world avoided

 

Source: NASA

 

このような死の世界が訪れるはずだったが、人類は1980年に禁止条約でオゾン量の減少に歯止めをかけた。1992年にオゾン量減少が止まった。しかしすでに大気中に存在するCFCの寿命が50-100年なので、上昇がなくなっても減少は極めて遅い。数値的にはCFCは 2000年にピークに達し現在までに4%減少した。

オゾンホールのリアルタイム情報は"Ozone Watch"で見ることができる。2015年の観測データ(下図)では10月にオゾンホールが増え、オゾン量が減少したが成層圏の冷却は見られず、漸近的な上昇が見られた。

 

meteorology ytd sh

 

Source: Ozon Watch

 

人類は1980年の禁止条約でオゾン層消失の危機を乗り越えたと言える。規制が効果を発揮した例は多くないが、CFC規制でオゾン量減少は食い止められた。温室効果ガスについては規制がなかなか進まないが、CFCのようにオゾン量の減少の「犯人」がはっきりしないこと(注3)の他に、化石燃料をエネルギー源とする必要性を無視できないせいことがある。

(注3)CO2増加によって地球上の緑化が30%進んだ。温暖化への寄与もあるもののCO2で砂漠化が進むことにはならないことがはっきりしている。

CFCの代替え冷媒のように簡単にエネルギー源を置き換えられないためであるが、仮に温室効果ガスを温暖化の「犯人」とすることの検証が認識されていないので総意が得られないのだとしたら、検証とシミュレーションを継続して現実的な規制を作るとともに排出規制を新技術で乗り切ることが不可欠である。

(NASA Earth Observatoryから引用)

 

 

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