超対称性レーザー〜フォトニクスで息づく素粒子理論

セントラルフロリダ大学とミシガン工科大学の研究チームは、超対称性の原理に基づくコンパクトで高出力のレーザーシステムの概念を提案した(Hokmadadi et al., Science 363, 623, 2019)。

 

半導体レーザーアレイの問題点を超対称性理論で克服

高出力パワーの小型レーザーシステムの物理学応用テーマは多い。そのため、これまで複数のレーザーを組み合わせてアレイにするアイデアの提案が多かったが、個々のキャビティの異なるモード間のクロストークおよび干渉による不安定性のために、このアプローチでは低品質のビームになってしまう。

 

この問題を克服するためのひとつの方法は単一モードの選択的増幅を使用することだが、それにも欠点がありうまくいかない。そこで新しい取り組みとして超対称性理論(注1)に基づいたアレイ構造で、安定に基本横モードでレージングできる超対称レーザアレイ新型レーザーが考え出された(下図)。

(注1)素粒子物理学では標準モデルを超える理論として知られる超対称性(SUSY)理論は、ボソンとフェルミオンの関係に代表される、「数学的に美しい」(注2)対称性理論である。超対称性理論では既知のすべての素粒子には、もっと重い「スーパーパートナー」が存在する。

(注2)「数学的」という意味は超対称性が自然の対称性であるという確たる実験的な証拠は見つかっていない、すなわちこれまで超対称性粒子はひとつも発見されていないからである。

 

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Credit: Science

 

上図はSUSYレーザーアレイの動作原理。 (A)破られない超対称性の無限に並ぶ井戸型ポテンシャルとそのスーパーパートナー。 基底状態を除いて、一次ポテンシャルのすべての固有値はスーパーパートナの固有値とする。 一次ポテンシャルとその超対称対応物の固有関数は、演算子AとA†の作用によって互いに変換される 。(B)損失のあるスーパーパートナー(青)に結合された一次活性格子(赤)を含む超対称性レーザーアレイの概略図。超対称性レーザーは基本同相モードでのみ放射される。

研究チームは超対称性を利用して、安定した半導体レーザーアレイを開発した。具体的には、高次モードを抑制して基本モードを強調するシステムを設計した。ここでは低品質のモードを損失の多いスーパーパートナーとペアにすることで、より高次のモードと位相が一致するようにアレイを設計した(下図)。

 

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Credit: Science

 

このアイデアをテストするために、研究チームは400nm離れた1000nm幅のインジウムリン(InP)上に複数の量子井戸を作成し、それに波長1,064nmのレーザーを照射して励起した。このとき高次横モードが抑制され発散が小さくなる。これは基本モードが損失のあるモードから切り離され、シングルモードレーザ発振が起きることを意味している。

実は今回のレーザーへシステムの提案に先立ち、概念を共有する2014年にモード多重伝送のための超対称性モード変換に関する論文が発表されていた(Heinrich et al., Nature Comm. online Jan. 2, 2014)。同じ概念(下図)が今回の仕事でレーザーに引き継がれ完成されたといえる。

 

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Credit: Nature Comm.

 

上図(a)4つの導波状態に対応できるマルチモード光導波路。 (b)スーパーパートナー(の3つのモードは、元の構造の高次モードと完全に位相が一致している。

超対称性理論はフォトニクス、レーザーの分野でも新しい概念として注目されるようになった。LHCとそれに続く加速器で実験的に超対象粒子が発見される前に、「安定化概念を借りた」レーザーやモード変換器が応用に供される方が早いのかもしれないが、フォトニクスと素粒子物理の関係を考えれば決して不思議な話ではないのだろう。

 

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