伝搬性電離層擾乱(TID)の太陽光スペクトルへの影響

伝搬性電離層擾乱(TID, Traveling ionospheric disturbance)は、地球の電離層を伝播する波状の電子密度構造異常で電波障害を引き起こす。TIDは空間内の電子密度分布を変調するため、プラズマパラメータのひとつである屈折率を動的に変化させ、電波の伝搬に影響を与える。

 

電離圏異常は地震を反映する

デリンジャー現象として知られる電離層擾乱は短波障害を起こすことで身近に感じるが、地球の電離圏の異常(プラズマ異常)はそれだけではない。電離圏に起こる異常(プラズマパラメータの変動)は、入射放射線の集束または増幅をもたらし、低周波電磁波に強く影響を与える。集束効果はスペクトル擾乱(SC, spectral caustics)の形で現れ、長波の動的スペクトルに観測される。下図は2011年3月11日の東北沖地震時に観測されたTID。

 

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Credit: NASA

 

電離層擾乱(プラズマパラメータ異常)を引き起こす原因は下図のように電磁波、音波、重力波の異常など多岐にわたるが、地震の他にも雷など大気放電など気象異常も含まれる。

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Credit: phys.org

 

伝搬性電離層擾乱をシミュレーション

山東大学の研究チームは、地球の電離層にレイトレーシングを適用して伝搬性電離層擾乱が太陽放射に及ぼす集束効果のシミュレーションを行った。波長λが300 km、タイムスケール40分のモデルによる電波伝搬をスネルの法則で可視化した(Koval et al., JGR Space Physics on line Nov. 05, 2018)(下図)。

 

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Credit: JGR Space Physics

 

シミュレーションにより、研究チームは、逆V型、X型、およびファイバー型を含む報告されている5種類のうち4種類のスペクトル擾乱を特定した。上図では集束効果が可視化されている。研究で、太陽の動的スペクトルに対する進行する電離層擾乱の集束効果の理解が進むものと期待されている。

電離圏全電子数の分布はGPSによる精密測定が進歩して100-1000kmスケールのデータが得られるようになって、TIDの実測が可能になっている。電離圏の異常の理解は実測とシミュレーションで加速する。GPSはナビゲーションだけでなく、電離圏の理解にも寄与することになる。小さな電離圏異常でもデータが蓄積され特定パターンと地震との相関が確立すれば、AIで地震予知を早めることもできるようになる可能性がある。

 

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