新しいド・ジッター宇宙観の幕開け

ウプサラ大学の研究チームは宇宙が多次元空間で膨張するバブルに乗っていると考える宇宙モデルを提案した。この新しい宇宙の概念はダークエネルギーの謎を解くかもしれないと期待されている(Banerjee et al., Phys. Rev. Lett. 121, 261301, 2018)。

 

批判される弦理論

過去およそ20年間にわたって、宇宙がますます加速する速度で拡大していることが知られている。この膨張の元になるのがダークエネルギーである。ダークエネルギーの性質を理解することは、基礎物理学の最も重要な課題のひとつである。反ド・ジッター空間は数学的には最大の対称性を持ち、負の定スカラー曲率を持つローレンツ多様体で(下図)、弦理論は反ド・ジッター空間に存在する。

The creation of a de Sitter universe from nothing ie from a de Sitter instanton

Credit: researchgate

 

弦理論がダークエネルギーの正体にひとつの答えを与えるのではないかと長い間期待されてきた。弦理論によれば、すべての物質は小さな振動する「弦のような」ものからできている。しかしこの理論は感覚的に理解できる3次元よりも多い10次元(11次元)という多次元空間の存在を前提としている。

ダークエネルギーを生み出すと考えられてきた弦理論のモデルは期待通りにはいかなかった。そのため研究者のなかにはこれまでに提案された弦理論モデルのどれもが可能性が低いと主張する批判が多くなった。ウプサラ大学の研究グループもそのなかのひとつである。

 

膨張するバブルに乗る宇宙

研究チームの新しい概念では、ダークエネルギーと宇宙が膨張するバブルに乗っている。このモデルでは宇宙全体がこの拡大するバブルの端に収容されると考える。宇宙の中に存在するすべての物質は、余分な次元の中へと伸びる弦の端に対応する。研究チームは、このバブルの拡大が弦理論の枠組みの中で生まれると主張している。研究チームの新モデルは、宇宙の創造と将来(下図)を説明すると同時に、弦理論の評価につながると期待されている。

 

060915 CMB Timeline75

Credit: NASA

 

夜明け前

LHC以降の加速器実験と宇宙の起源は深いつながりを持っている。宇宙論と素粒子論の立場で対極にあるスケールで残された問題を追求していくと、宇宙の起源にたどりつく。これからの世代は宇宙論と加速器科学で天文や素粒子物理の垣根を崩すことになる素晴らしい夜明けを体験出来るのかもしれない。うらやましいと同時に自然科学の探究の目的が消えるのも残念な気もする。

 

nVGVD

Credit: physics.stackexchange

You have no rights to post comments

スポンサーサイト

Copyright© 2013.   放射線ホライゾン rad-horizon.net   All Rights Reserved.