衛星データのマイニングで発見された非熱的X線放射

スペインのバルセロナ宇宙科学研究所の研究チームは新しい理論的モデルに基づいて、ESA(欧州宇宙局)のXMM-NewtonとNASAのChandra衛星のデータアーカイブを調べ、予測された非熱的γ線放射を発見した。注目すべき点は予測に基づいて既測定データから新発見みつけ出すモデル予測を活用したインテリジェント・マイニング手法である。

 

高速回転する中性子星パルサーはいわば宇宙の放射光源である。パルサーが回転し、ビームが交互に地球の方を向くようになると、光源はより明るい状態とより暗い状態との間で振動し、数ミリ秒から数秒ごとに脈動を生じる。パルサーは高密度かつ強磁場の巨星である。このような強い磁場で粒子がどのように挙動するかを理解することは、物質と磁場の相互作用の理解に役立つ。

 

非熱的X線放射

もともとRF放射によって検出されたパルサーは、他の放射線を放出することも知られている。RF放射以外で一般的なものは熱放射であるが、非熱放射を放出することもある。非熱放射は、シンクロトロン放射と曲率輻射(注1)の2つのプロセスによって生成することができます。両方のプロセスは、荷電粒子が磁力線に沿って加速され、それらが電波からγ線までの波長の光を放射する。

(注1)電粒子は加速度を受けると輻射する。曲がった磁場に沿って走ることによる輻射を 「曲率輻射」と呼ぶ。非熱X線は主にシンクロトロン放射に由来し、γ線は2つのメカニズムの組み合わせに由来する可能性がある。下はX線パルサーLMC-X4からのX線強度変化。

 

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Credit: inspirehep.net

 

NASAのフェルミγ線宇宙望遠鏡は、全天をスキャンすることができるため、過去10年間に200種類以上のパルサーを検出しているが、そのなかで非熱X線脈動は約20件にすぎない。そこでX線望遠鏡をどこに向けて観測するかを予想する必要が生じる。研究チームは、γ線で検出されたパルサーもX線に出現するかどうかを予測するためにシンクロトロンと曲率輻射を組み合わせた光源モデルを開発した(Li et al., Astrophys. J. Lett., online Nov. 18, 2018)。

このモデルは、既知のγ線放射に基づいて、我々が観測すべきX線放射(下図)を予測することができる。モデルは、フェルミによって検出されたパルサーのγ線放射の輝度をパルサー放出のパラメータと組み合わせる。研究チームは、モデルに基づいて期待される既知のγ線放出パルサー3組に、非熱的X線放射を見出した。3つのパルサーのすべてからX線の脈動だけでなく、X線スペクトルがモデルで予測したものとほぼ同じであることも確認された。

 

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Credit: Astrophys. J. Lett.

 

AIと研究者

研究者の多くはAIときくとプログラマーの主観に左右されるから、自分の領域とは関連しないと思う人が多いのではないだろうか。しかし現実には材料開発における最適組成決定から高エネルギー衝突実験のデータマイニングですでに応用が始まっている。

特にビッグデータの解析が人間の能力を超えるとある種のインテリジェント解析ツールやモデリングの助けを借りないとどうにもならない場合が多い。ここで紹介したマイニング手法もまた衛星ビッグデータの解析で稀なγ線放射をピンポイントでみつけだす新しいアプローチである。既測定データから新発見みつけ出すモデル予測を利用したインテリジェント・マイニング手法はそれらのひとつである。

 

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