レーザーブラストでつくる反物質

反物質は、通常の物質と接触すると消滅する物質である。地球上で反物質を見つけるのは困難であるが、それは宇宙深部に存在すると考えられている。しかし実は、希薄な空気から反物質を作り出すことができることはあまり知られていない。物質と反物質のレーザーブラスト(注1)でそれが可能になる。

(注1)一般に知られているレーザーブラストとはレーザーで表面を傷つけずにクリーニングする技術である。ここでいうレーザーブラストとはPWクラスの高出力レーザーのウエークフイールドで電子を加速して、物質と反物質の対(電子と陽電子)を創生する技術を指す。

 

負に荷電した粒子が高速で移動するとき光子を放出する。粒子が非常に速く動くなら、多くの光子が放出される。一方、強力なレーザーパルスによるブラストでも電子は光速に近い速度まで加速され、γ線ビームを生成することがわかってきた。

γ線同士が衝突すると、物質と反物質の対(電子と陽電子)を作り出す。2016年にCERNのALPHAプロジェクトが世界で初めてレーザーを使った反物質生成に成功した(下図)。しかし今日ではレーザーで反物質をつくる実験はもっと身近な存在になりつつある。

 

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Credit: arxiv.org/abs/1304.5379

 

光トラップ

物質 - 反物質ペアをより効率的に作成するため、γ線を放出した後に電子が移動しないようにする「光トラップ」技術の研究開発が進んでいる(Jirka et al., Scientific Reports 7: 15302, 2017)。光トラップでは強力なレーザーパルスで、より多くのγ線が生成され、さらに多くの反物質が生成される。

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Credit: University of Lisbon

 

このプロセスは繰り返され、ペアの数は高速カスケードとなり高密度化が可能になる(下図)。このようなカスケードは、宇宙の遠くのコーナーで自然に発生すると考えられている。例えば、パルサーと呼ばれる急速に回転する中性子星は、地球上の磁場より数10倍強く、カスケードを生成できる非常に強い磁場を持っている。

 

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Credit: University of Lisbon

 

物質 - 反物質プラズマ用の光トラップは4組のレーザーで構成され、1つの平面に配置され、すべて同じポイントに集中する。レーザーが重なり合うと、それらは2D電界波を形成する(上図)。

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Credit: Scientific Reports

 

実験室でカスケードを調べれば、極限状態の天体物理プラズマに関連する謎を明らかにすることができると期待されている。カスケードの研究で先端にあるのはELIに集まる国際共同研究体制である。リスボンの極限プラズマ研究所もELIを支える研究組織のひとつであるが、母体は核物理研究所(Instituto de Plasmas e Fusão Nuclear at IST)で、このレーザーブラストに関する研究はEuropean Research Council through the Advanced Grant "Accelerates" (ERC-AdG2010 no. 267841)に基づいている。レーザーウエークフイールド(下図)を用いた粒子加速機構に関する研究で知られる。EUは科学技術予算をスペイン、ポルトガル、ポーランドなどに新しい施設を建設し、それを活用するプロジェクト予算を投入して、若い研究者を世界中から登用し多大な成果をあげている。

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Credot: nstituto de Plasmas e Fusão Nuclear

 

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