重力定数(万有引力定数)を測定する新しい方法

万有引力定数(ニュートンの重力定数)は、重力相互作用の大きさを表す物理定数でGで表され、よく知られているように距離rの質量m1, m2の間に働く重力FF = G x m1・m2/r2(デイメンションはm3 kg-1 s-2)で記述できる。

 

中国とロシアの研究チームは、重力定数を測定する2つの新しい方法を考案した(Li et al., Nature 560, 582, 2018)。

重力は自然の4つの基本的な力の1つである。しかし意外なことに何百年もの世界中の科学者による努力にもかかわらず、重力相互作用の理論的解明は進んでいない。その理由のひとつは、実際の力定数を測定する方法を見つけることができなかったということにある。

 

現在認められているG値は6.67408×10-11 m3 kg-1 s-2である。この方法(下図)は1798年にキャベンデイッシュによって最初に考案されて以来、より正確にするために何度も変更されている。研究チームは、重力定数を測定する標準的なこの方法に変更を加えた。

 

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Credit: opentextbc

 

研究チームが提案する第1のアプローチでは、空気中ワイヤーで吊るされた金属で被覆されたシリカプレートでできている。 2個の鋼鉄製ボールが重力で引き付けられ、重力定数は、ワイヤーがどのくらいねじれているかを知ることによって測定される。

第2のアプローチは第1のアプローチのシステムを、回転する回転台から吊り下げる。この方法では、回転台のねじれで重力を測定する。

 

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Credit: Nature

 

どちらのアプローチに対しても、研究チームは地震を含む近くの物体や外乱からの干渉を防ぐ機能を追加した。彼らは、6.674484×10-11と6.674184×10-11m3 kg-1 s-2の測定値が得られ、どちらも、以前の他の測定値よりも正確な定数であることがわかった(下表)。

 

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Credit: sciencenews

 

中国の研究論文は高IFの雑誌を席巻している印象である。その背景は学術誌や大学に多大な資金援助を行っていることと無関係ではないのだろう。しかしこの仕事のような地道な基礎科学を追求する論文も少なくない。中国が科学技術大国として認められるには、地道に研究予算をつぎ込む姿勢を今後少なくとも数10年は続ける必要があるだろう。

しかし高IF論文数だけで中国を科学技術大国とみる人はいない。中国が推進する「一帯一路」政策のように自国の利益を追求する姿勢を払拭しなければ、科学技術立国は不可能である。先進技術の輸入に頼り、精密機器を購入して分解しリバースエンジニアリングでコピーを作ることをやめる時期に来たように思える。そうすると開発速度は遅くなるのだが、技術を学ぶことができる。

 

例えば上海の放射光源SSRFはSLSの技術があちこちに使われており(そのSLSもESRFの技術がもとになっている)、コンパクトな直線加速器の銅の溶接は見事である。実際、ブラジルの最新鋭の放射光SiriusではSSRFの直線ん加速器を輸入しているほどだ。しかしホールを歩くと日本のメーカーの分光器がコピーされていたりする。制御ソフトはESRFのものが持ち込まれている。厳しくみるとまさにコピー文化の宝庫なのだが、これから建設されるHEPSやHALSでは改善されるのだろうか。

 

日本も気をつけないと他人事ではない。かつてある大型予算をもらって、世界にない装置開発を目指していた筆者は、担当事務官に「あなたの買い物は何ですか」、と尋ねられて驚いた。装置を使った研究開始が遅れるので、若い研究者には気の毒だが、研究イコール買い物というやり方は長い間に技術力を失い、土台が朽ち果てる。

 

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