ペインレス大腸検査 "CT Colonography”(CTC)

 大腸検査といえば内視鏡である。内視鏡検査は「上から」と「下から」があり、前者は胃や食道を対象とするもので正確には「上部内視鏡」と呼ばれる。後者は「大腸内視鏡」と呼ぶ(下の写真)。これらの内視鏡は光学式であり大腸内部を目視してポリープを発見しその場で切除する機能を持っている。

 

 

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光学的内視鏡

 光学的内視鏡の発達は著しいものがあり、分解能においてはこれから紹介するCTとは比較にならない。一方で被験者の負担において苦痛の無いCTとは比較ができない。大腸内視鏡の診断の流れをみると容易にその負担は理解できる。まず検査前日に下剤を飲む。飲まなくて良い場合は軽めの夕食が許される。

 

 いずれの場合でも検査当日の手順は同じでまず、前処置室では大腸をきれいにする下剤を飲む。数回に分けて合計で2リットル程度の下剤を飲みきることはきびしいのはいうまでもない。液体のような便(水様便)になるまでトイレに通うことで、準備が整う。

 検査台で鎮痛剤や場合によっては腸の弛緩剤を飲む場合もある。いよいよ校門から内視鏡を注入し検査が始まる。検査時間は患者によって異なるが大体数十分である。文章にすればたったこれだけだがその辛さはやった人にしかわからないという。もちろん医師に大腸内視鏡を指示されたら従うしかないのだがもっと苦痛の少ない検査方法はないものだろうか。

 

負担の少ないCT

 そこで登場するのが"CT Colonography"(CTC)だ。CTCはマルチスライスCT(注)の多段化が進んでから急速に能力がアップし、現在では研究から臨床へと応用が進んでいる。

  CTの原理を復習しておこう。下の図で(2)が線源、(3)が1次元検出器とすると、ある角度で透過X線の強度は物質の密度分布によって分布を持つ。このとき物質を微小領域の集合体と考えてそれぞれのパスごとの透過吸収を指数関数で表現する。ひとつの角度でひとつの輪切りにした空間に対してメッシュの数だけ数式ができる。角度を変えて行くと連立方程式ができるので微小領域の密度を未知数として、それらが求められる。メッシュを小さくすれば膨大な計算量になるが、原理的には解が求まる。その解である微小空間の密度を3次元表示したものがCTとなる。ここで輪切りの数を増やす試みがヘリカルCTとマルチスライスCTである。

 

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マルチスライスCT
 Computer Tomography(CT)は線源と検出器が直線状に置かれ、360度回転しながら輪切りにして格方向の吸収情報から連立方程式を解いて3次元像を得る。ここでは線源−検出器は1対であった。螺旋状に回転しながらCT画像を取得する「ヘリカルCT」を経て、検出器の多列化「マルチスライスCT」が開発された。

 

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 最初は1列だったものが、広範囲の対象を短時間で撮影するために 4列、8列、16列、32列、64列と検出器の列数が増え、現在では最高320列マルチスライスCT(MSCT)まで開発されている。これによって短時間で広範囲の領域の3次元像が高分解能で得られる。例えば東芝の64列MSCTではスライス厚は0.5mmで64スライス画像を1回転で得ることができる。MSCTと内視鏡は相補的に診断とポリープ除去が効率良く進むようになった。

 

CTCとバーチャル内視鏡

 そのCTと可視化ソフトウエアが組み合わされてバーチャル内視鏡画像を提供する技術がCTCである。CTCの検査では下剤を飲む代わりに造影剤(Ba)を摂取し大腸を空気で肛門から拡張する。CTCの負担もないわけではないが光学式内視鏡で下剤を飲む苦労に比べると少ない。測定は仰向けとうつ伏せで行なうことで正確な画像が得られる。

 

 320列MSCT(東芝)での一度に得られる範囲は16cmを越えるため心臓のパターンが一度に測定できるので鼓動があっても検査に支障はない。膨大な3次元データはソフトウエアにより大腸部分を取り出して立体表示され(下のイメージ)、バーチャル内視鏡画像を構築して大腸内部の検査を行なう。大腸イメージのみをとりだしても内部はこのままではわからないが、元データは3Dなので密度分布から今度は、内側からみたイメージを構築できる。それがバーチャル内視鏡である。

 

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 CTCのバーチャル内視鏡観察ではポリープの発見のみで、それを除去するには大腸内視鏡が別に必要になるが、スクリーニングとして64列MSCTでは1時間に6人の検査が行なえるため、光学的内視鏡を保管する検査法として有望視されている。CTCの実現にはMSCTのハードウエアに加えて高度な画像処理アルゴリズムと迅速な処理を可能にした計算機速度の向上がある。CTCは被験者の負担は少なく、迅速なのでスクリーニングに適しているが、重要なことはポリープが発見された場合、それを除去するには光学的内視鏡が必要になるということである。

 

CTCによる大腸CTを実施している病院

施設にによって機材が異なるため病院のリストを参考にして詳細は病院のウエブで情報を得て欲しい。

 

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