ペロブスカイト量子ドットからのコヒーレント単一光子放出

MITとETHの研究チームは量子計算および量子通信デバイスの重要な要素技術のひとつである単一光子源をペロブスカイト量子ドットでつくりだすことに成功した(Uzart et al., Science online Feb. 21, 2019)。

 

コヒーレント光源の必要性

光子がコヒーレントである場合、光子は十分に長期間にわたって量子状態を維持する異なる単一光子間の量子干渉は、情報担体として単一光子を使用する多くの光量子情報技術の基礎となる。。

これまでも多くのコヒーレントな単一光子源の研究が行われたが、エミッタ材料のランダムな変動は、予測不可能な方法でフォトンの特性を変化させてしまうため、コヒーレンスが破壊される。コヒーレンスを維持し、明るく安定したエミッタ材料を見つけることは、環境だけでなく材料自体も励起された量子状態とランダムに相互作用してコヒーレンスを壊す揺らぎの要因となるからである。

コヒーレント光子のもう1つの重要な量子効果は、「量子もつれ」で、2つの光子は本質的にそれらが1つであるかのように振る舞い、それらのすべての特性を共有する。

 

コロイド量子ドット材料の新展開

以前の湿式で製造されたコロイド量子ドット材料は、単寿命のコヒーレンスを持っていた。研究チームは、ペロブスカイトから量子ドットを作ることが1000倍以上良いコヒーレンスを作り出すことを発見した。このコロイド状ペロブスカイト量子ドットのコヒーレンス特性は現在、ダイヤモンド中の原子状欠陥や気相ビームエピタキシーを用いて成長した量子ドットなどのエミッタ材料のレベルに近い。

ペロブスカイトの大きな利点の1つは、レーザー光励起で高速に光子を放出することである。それらの周囲との相互作用がほとんどなく、コヒーレンス特性および安定性を大幅に改善するために、量子計算アプリケーションにとって重要な特性となる。

さらにコヒーレント光子は、量子暗号化通信アプリケーションにも使用できる。偏光エンタングルメントは、傍受の試みを拒否する安全な量子通信の基盤となる。

 

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Credit: Science

 

上図は臭化セシウム鉛ベースの量子ドットの特性をしめしたもの。ペロブスカイト結晶構造は、コーナー共有八面体(PbBr6)で形成され、セシウム原子が間の空隙を占める(A)。高解像度のTEM画像は、平均長さが約13 nm、スケールでのサイズの均一性が非常に高い立方体形状を示している(B、C)。量子ドットの室温吸収および発光スペクトル(D)。

 

強いスピン軌道相互作用のために、電子と正孔の全角運動量は良い量子数である(??=?h= 1/2)。交換相互作用は励起子を一重項(?= 0)と三重項(?= 1)に分裂する。三重項状態は、ラシュバ効果により、その角モーメント投影に従ってさらに分裂する。斜方晶系ブラべ格子をもつ場合、|?| =±1,0縮退が解ける。一重項は光学的に暗いが、三重項状態は発光性である。

ペロブスカイト量子ドットは量子フォトニクス材料として有望であるが、これでまたペロブスカイトの可能性が広がった。この材料は鉛を成分としたペロブスカイトだが、鉛フリーのペロブスカイト材料も開発されており、有機ハイブリッド型も含めると、この結晶構造はまさに無限の可能性を秘めている。Oh対称性の奥深さは計り知れない。20世紀は半導体の世紀でありそれを支えた結晶(局所構造)はTd対称性だったが、21世紀は局所構造の対称性がOhの世紀になるかもしれない。

 

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