トポロジカル絶縁体における励起子ポラリトンの超高分解能中赤外イメージング

テルアビブ大学の研究チームは超高速かつ超高空間分解能で、2D材料の励起子の生成と伝播を調べ、炭素およびモリブデナイトなどのわずか数原子の厚さの2D材料の励起子が組み合わされると、どちらの材料にも帰属しない量子特性を示すことを見出した(Mrejen et al, Science Advances 5, eaat9618, 2019)。

 

励起子ポラリトンの特性のひとつの発光現象は古くから知られている。励起子ポラリトン発光は、太陽電池、レーザー、テレビ、その他のディスプレイなどの発光デバイスに応用できるため注目され、理論的にも1966年以降(J. J. Hopfield and D. G. Thomas, Phys. Rev. 132, 5 563 (1963))、多くの光物性研究者たちによって活発に研究されてきた。

2D材料、特にトポロジカル絶縁体の励起子ポラリトン発光は、通信およびフォトニクスベースの量子計算機に応用が期待され、多くの分子振動が観測される中赤外線領域の、ダイナミクスの理解に向けた研究が活発化している。トポロジカル絶縁体(セレン化ビスマス結晶)表面での励起子ポラリトン発光は、新しい発光デバイスやレーザーへの応用が期待されている。

 

研究チームはフェムト秒−ナノメートルスケールの時空間イメージング技術を開発し、室温で半導体材料であるWSe2における励起子ポラリトンのダイナミクスを観察した(下図)。励起子ポラリトンの伝播速度は光速の約1.7%で、この時間スケールでは、光は数100nmしか進行しない(時間分解イメージングに適している)。

 

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Credit: Science Advances

 

上図はWSe2における励起子ポラリトンの近視野超高速広帯域ポンププローブ実験の概略。(A)超高速ポンプ - プローブ励起子ポラリトンの励起および検出の原理。(B)近接場ポンププローブ装置の概略。 650〜1050 nmの広帯域スペクトルをカバーする超高速サブ10 fsパルスのTi:サファイア光源は、ダイクロイックミラー(DM)によって2つのパルスに分割される。650〜700nmのポンプ光と700から1050 nmのプローブ光が生成される。プローブはポンプに対して66±3.3 fsのステップで遅延され、遅延後に再結合され、SNOMチップに集束される。タッピングモード操作に基づく閉ループフィードバックでチップはWSe2表面を走査する。(C)励起子Aバンドギャップ周辺のいくつかの波長での、厚さ60 nmの定常状態(プローブのみ)のSNOMイメージング。

 

研究チームは複数の2D材料を積み重ねた試料の励起子ポラリトンの速度を制御する方法を模索している。一方、ラトガーズ大学の研究チームは、粒子と反粒子が互いに結合し、固体の表面上で互いに回転する励起子ポラリトンが、トポロジカル絶縁体でその回転を制御できる「カイラル表面励起子」となることを発見した。「カイラル表面励起子」は円偏光の回転方向が制御できる発光デバイス、太陽電池、レーザー、電子ディスプレイに応用できる可能性が注目されている(Peng et al., PNAS 113, 6845, 2016)。

 

励起子ポラリトン発光は2Dトポロジカル絶縁体と組み合わされて、新しい展開が始まっている。励起子ポラリトン発光は新しい材料で新たな方向性が見えてきたが、根底には基本的な理論の枠組みが進んでいたことがある。

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