THz発光分光でみた界面電荷の超高速移動

フラッシュメモリから電池や太陽電池にいたるまで電子材料では、界面を越えて流れこむ電荷(電子)はスイッチングやメモリなどのデバイス機能の基盤となる。スタンフォード大の研究チームは、界面を越えた電荷の動きを超高速時間分解で観察することに成功した(Ma et al., Science Advances 5, eaau0073, 2019)。

 

タイムドメインTHz放射分光法

研究チームは移動する電子の発生する電磁波の小さなバーストを測定することによって観測した。その原理はマクスウェルの方程式によって記述することができる古典論の範疇である。これまで観測手段がなかったが、研究チームは電荷(この場合は電子と正孔)が急峻な界面の移動を観察する新しい方法(タイムドメインTHz放射分光法)を開発した。

 

マクスウェル方程式によると、電流パルスはマイクロ波から可視光やX線まで広範囲の波長を持つ電磁波を発生する。研究チームは超短パルスのレーザー光を試料に照射し、タイムドメインTHz放射分光法と呼ばれる手法(下図)で発生したTHz波信号を記録した。

 

Colour on line Schematic of the THz time domain spectroscopy setup

Credit: researchgate

 

遷移金属ジカルコゲナイド界面

この実験で対象とした材料は、数原子の厚さの2D半導体材料として注目を集める遷移金属ジカルコゲナイド(TMDC)である。2種類のTMDCが交互に積み重ねられると、電子がある層から次の層へと流れることで新しいデバイス応用が広がる。

研究チームは、あるTMDC層から別のTMDC層への電子の移動によって、電磁波スペクトルのマイクロ波と赤外光の間に入るテラヘルツ波のフリッカーが発生することに着目し、二硫化モリブデン(MoS2)と二硫化タングステン(WSe2)のTMDC材料について実験を行った。

下図AはMoS2とWSe2の界面準位、Bは光吸収で発生するTHzの方向を模式的に示した。Cは発生したTHz波の強度の時間依存。2層の積層順を逆にすると信号位相が逆転する。

 

eaau0073.full 1

Credit: Science Advances

 

これらの測定では、層間の電流の移動距離と移動速度が明らかになっただけでなく、その移動方向も明らかになった。同じ2つの材料を逆の順序で積み重ねた場合、電流はまったく同じで反対方向に流れた。下図Aは界面準位と分極方向の模式図、BはTHz波の電場と励起光強度の関係、非線形性が観察されている。

 

eaau0073.full 2

Credit: Science Advances

 

研究チームは2つの結晶層のうちの一方を他方に対して回転させると、結合層の電子的および光学的特性が変化することを利用して、一方の層から他方の層への電子の急速な動きを直接追跡することができることを明らかにした。

 

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