電界脱離質量分析法による単一細胞イメージング

化学物質の細胞内の分布を知ることは分子生物学や単一分子イメージングなどの先端医療技術で中心的課題である。厦門大学の研究チームは、生物学的細胞内の化学物質の無標識検出と高分解能マッピングを可能にする質量分析と生物学的イメージングを組み合わせたハイブリッドイメージング手法を開発した(Yin et al., Angewandte online Jan. 02, 2019)。

 

従来技術(超微細光学的方法)の限界

STED(注1)およびPALM(注2)顕微鏡法などの超微細光学的方法は、遺伝子発現を同定し、分子分解能で細胞区画内の分子を局在化させる確立された技術である。しかし、これらは、通常は染料が標的分子に結合したときに発生する蛍光をモニターする間接的な方法である。

(注1)Stimulated emission depletion(STED)顕微鏡は目的のタンパク質に蛍光物質を結合させ,これが出す光を観察する蛍光顕微鏡。

(注2)Photoactivated localization microscopy (PALM)顕微鏡は励起状態でSTED光を当てると「誘導放出」と呼ばれる現象が起き,色素は蛍光を出さず,強制的に基底状態に落ちていく。このとき放出される蛍光とはタイプの違う光で回折限界以下の分解能(数10nm)が得られる。

 

分子を同定するための直接的な方法は質量分析で、表面からレーザービームによってイオン化された分子の化学質量を計測する。しかし質量分析法は、高解像度画像処理法と組み合わせると回折問題を引き起こす。さらに、生物学的細胞は通常粗い表面で、信号を歪ませることが問題だった。

 

脱離イオン化イメージング法

中国の厦門大学の研究チームはこれらすべての課題を考慮し、生物学的細胞の特殊な表面状態に対応し高い感度を持つ脱離イオン化イメージング法による飛行時間型質量分析計を開発した。研究チームは新しい手法で分子からの質量シグナルに基づいて細胞オルガネラの周囲の消毒剤プロフラビンの分布および蓄積を可視化することができた。

研究チームは「近接場脱離陽イオン化飛行時間型質量分析計」(NDPI-TOFMS)と呼ばれるハイブリッド装置を開発し、それを使用してHELA細胞(ヒト細胞株および細胞生物学における主力製品)の化学分子を検出およびマッピングした。乾燥した細胞をステージ上に置き、そして超精密レーザーにより、数十分の数マイクロメートルのプローブ径で表面を走査した。脱着した分子を別のレーザービームでイオン化した後、質量分析計で同定した。

 

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Credit: Angewandte

 

この方法の利点は、細胞サンプルの個々の細胞内で化学的およびトポグラフィー的に画像化が可能なことである。3-D再構成画像はターゲットのプロラビンの分布を明らかにした。走査型プローブ顕微鏡と質量分析を組み合わせたこの「ハイブリッド技術」は、不規則な表面の歪みのない高解像度化学マッピングを可能にした。この研究では、サブミクロンスケールで化学マッピングが可能であったが、さらにナノスケールの直接的かつ無標識の化学的マッピングを目指している。

 

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Credit: Angewandte

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