実現に近づいたナノレーザー

ナノレーザーの提案は数年前にさかのぼる。その当時のナノレーザーの概念は一般的に使用されているヘテロ構造の半導体レーザの設計と同じである。主に可視光と赤外光を生成するので、ナノレーザのキャビティの寸法は100万分の1m程度になる。

 

ナノレーザーの出力がコヒーレントになる電流の評価はほとんど不可能で、実用化のためには、ナノレーザの2つの領域、すなわち高電流でコヒーレント出力を有するレージング作用と、低電流でインコヒーレント出力を有するLED領域を区別する必要がある。モスクワ物理学研究所の研究チームは、ナノレーザーの評価方法を開発し、実用化に一歩近づいた(Vyshnevyy and Fedyanin, Optics Express 26, 33473, 2018)。

近い将来、ナノレーザーは、光導波路に基づく新世代の高速相互接続のための光集積回路に組み込まれることになり、それはCPUおよびGPUの性能を数桁向上させるであろう。同様に、光ファイバインターネットの出現により接続速度が向上し、同時にエネルギー効率も向上した。さらにナノレーザーは化学的および生物学的センサー、機械的応力センサーに応用や、ヒトを含む生体内のニューロン活動制御に応用が期待されている。

レーザーの定義であるコヒーレンスと密接に関連している特性は、いわゆるレージングしきい値の存在である。この閾値以下のポンプ電流では、出力放射はほとんど自然発生的であり、その特性において従来の発光ダイオード(LED)の出力と変わらない。しかし、しきい値電流に達すると、放射はコヒーレントになる。この時点で、従来の巨視的レーザーの発光スペクトルは狭まり、そしてその出力パワーは急上昇する。この特性を使うと、レーザー出力しきい値を決定することができる。

 

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Credit: A.A. Vyshnevyy and D.Yu. Fedyanin, DOI: 10.1364/OE.26.033473

 

ナノレーザ-の多くは閾値電流を示すが、一部のデバイスでは対数 - 対数目盛上の直線(図1Bの赤い線)にすぎないため、発振しきい値を出力電力対ポンプ電流曲線の分析では特定できない。そのようなナノレーザーは「無しきい値」として知られている。

このようなナノレーザーではコヒーレンスを測定することで閾電流測定を置き換えられる。しかし、発光スペクトルおよび出力パワーと異なり、ナノレーザーのコヒーレンスを測定することは非常に困難であった。モスクワ物理工科大学の研究チームは、直接コヒーレンス測定する代わりにナノレーザー放射のコヒーレンスを定量化する新しい方法を開発し(図1B)、「無しきい値」ナノレーザーにも、実際にはLEDとレージング領域を分ける明確な閾値電流が存在することを明らかにした。

 

さらにナノレーザーの閾値電流は、巨視的レーザにおけるレーザー発振閾値に対応した出力特性の特徴または発光スペクトルの狭小化とは全く関係がないことが判明した。ナノレーザーに関するこれまでの論文では、レージング領域は達成されなかった。多くの場合、ナノレーザーの自己発熱によりコヒーレント出力を達成することはできなかったのである。

研究チームの調査結果は、ナノレーザの放射が、その設計に関係なく、コヒーレントになる条件を予測することが可能であることを示唆している。これにより、決められた特性と保証されたコヒーレンスを持つナノスケールレーザーを設計することがでる。この研究でナノレーザーの実現に近づいた。ナノレーザーが組み込まれた光集積回路で、フォトニクスの応用が一気に開かれるだろう。医療イメージング、材料イメージングなどの画像データ処理で真価が発揮されることを望みたい。

 

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