2D界面励起子の偏光制御バレートロニクス

スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究チームはは、室温で励起子流を制御する技術を一歩進め、励起子の特性を制御し、放出される光の偏光を変える方法を見つけた(Ciarrocchi et al., Nature phtonics online Dec. 31, 2018)。これは、より少ないエネルギー損失と熱放散を持つ新世代の電子デバイスにつながると期待されている。

 

励起子すなわち励起された電子は励起前のエネルギー帯に「正孔」を残す。そして、電子は負の電荷を持ち、正孔は正の電荷を持つので、クーロン力によって束縛される電子 - 電子正孔対(束縛励起子)となる。

半導体および絶縁材料にのみ存在する励起子で構造がわずか数原子の厚さの2-D材料で動作するデバイスをつくることができる。研究チームはWSe2とMoSe2を組み合わせたヘテロ界面をh-BN層で挟み込む構造(下図a, b)を、円偏光レーザービームを照射し、h-BN層間の電位を制御することで、バンド間遷移(IX1, IX2)を選択し、励起子発光の偏光、波長および強度を制御することに成功した(下図c, f) 。

 

41566 2018 325 Fig1 HTML

Credit: Nature Photonics

 

特定のデバイスの偏光を変えることで(下図)、それに接続されている2番目のデバイスの特定の谷を選択できるので、0から1または1から0への切り替えに対応させることができる。これは電子と正孔のバンドの「谷」に対応するバレートロニクス(注1)のひとつで、ナノレベルで情報をコーディングおよび処理するために活用できる。

(注1)バレートロニクスとはバンド構造でエネルギーの極小状態をもつ波数の位置が複数ある場合、電子はどこの「谷(バレー)」に入るかの自由度をスピンなどと同様に制御して(擬似的なスピン状態として)、新しい電子回路の制御に用いる概念である。

 

41566 2018 325 Fig3 HTML

Credit: Nature Photonics

 

原子の厚さの結晶シートの形で得られるWSe2は、2つの単層を組み合わせた結果生じる「二重層」が自発的な電気分極を生じる。この分極は、印加された電界によって2つの反対の状態の間で反転することができる。今回の研究は分極スイッチングで発光の偏光特性の制御ができることを示しており、バレートロニクスへ向けた研究の進展が期待されている。

 

関連記事

WSe2単原子層バレートロニクスによる超高速光計算機
強誘電体スイッチング2D物質WTe2
量子コンピューティングの未来を担うWSe2の双励起子とトリオン

 

You have no rights to post comments

スポンサーサイト

Copyright© 2013.   放射線ホライゾン rad-horizon.net   All Rights Reserved.