π結合スキームによる位相ロックテラヘルツレーザー

MITの研究チームは、高出力、高指向性利得、広範な周波数チューニングの3つの重要な性能を達成したテラヘルツ帯の位相ロック・フォトニクス・ワイヤーレーザーを開発した。このテラヘルツレーザーは、化学的センシングとイメージングの幅広い用途に応用が期待されている(Khalatpour et al., Nature Photonics online Dec. 12, 2018)。

 

高出力フォトニック・ワイヤーレーザーは、皮膚や乳癌など医療イメージング、薬物や爆発物の検出などセキュリテイイメージングに利用できる新しいイメージング光源となる。今回開発されたレーザーでは、複数の半導体ベースの高効率ワイヤーレーザーをペアにし、「位相ロック」で同期をとる。アレイに沿って対の出力を組み合わせることにより、極小ビーム発散の高出力ビームが生成される。下図はInPデバイスを用いたフォトニックワイヤーレーザーの構造。 

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Credit: aserfocusworld.com

 

この研究で注目すべき点はπ結合スキーム(注1)で個々のレーザーを結合したことで、広い周波数チューニングが可能になり、測定の分解能が向上する。 3つの性能指標をすべて達成することは、より信頼性が高く効率の良い光源でノイズが少なく、解像度が高いイメージングが可能になった。

(注1)分子軌道(π軌道)の重なりを利用したレーザー結合

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Credit: Nature Photonics

 

研究チームは、長年にわたり、「フォトニック・ワイヤー・レーザー」と呼ばれる新しいタイプの量子カスケード・レーザーを開発してきた。一方向に放射するために電磁波を制御するワイヤーレーザーの導波管の新しい設計で、高い効率とビーム品質を実現した。

 

ブレークスルーはπ結合スキーム

研究チームはさらに、分子軌道が重なり合って独立した素子のレーザー結合を実現する「π結合スキーム」で、アレイに沿って独立ワイヤレーザー間を結合させることを考えついた。この結合スキームで複数のワイヤーレーザーの位相ロックが可能になった。

研究チームは、10個のπ結合型ワイヤーレーザーのアレイを試作した。レーザ—は、3.8THzで約10GHzの幅で周波数チューニング可能、アレイ上のπ結合レーザペアの数に応じて約50から90mWの出力を有している。

 

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Credit: Nature Photonics

研究チームは現在、110デシベル以上の高ダイナミックレンジのイメージングシステムを開発しており、これは皮膚癌のイメージングなどの多くの分野で活用出来る。皮膚癌細胞は、正常細胞よりもテラヘルツ波をより強く吸収するため、テラヘルツレーザーはそれらを高感度に検出できる。開発されたチップサイズのデバイスでは、高出力でありチューナブルであることが特徴である。

 

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