X線3Dイメージングの新しい手法〜ゴースト・イメージングとマルチプロジェクション

X線3Dイメージングは医療や産業利用で欠かせない存在であるが、X線照射による生物を含む対象の損傷で利用範囲が制限されている。しかし新しい手法と光源の進歩で、空間分解能や照射線量が飛躍的に向上している。ここでは将来の3Dイメージング手法を高度化し実用化されるふたつの新しい技術を紹介する。

 

X線3Dゴースト・トモグラフィー

オーストラリア国立大学とESRFの研究チームは、ゴースト・イメージングとして知られている従来とは違ったイメージング手法を用いた物体の内部のX線3D画像を構築する技術開発を行っている(Kingston et al., Optica 5, 1516, 2018)。

3D X線イメージングは、損傷するX線への長時間の曝露を必要とするため、適用が制限される。ヒトでは、医療用X線イメージングからの放射線が多すぎると癌の危険性が増し、3Dマンモグラフィーなどの3DX線イメージングによるスクリーニングが制限される。一方、3Dゴースト・イメージングでは透過X線の線量が大幅に減少する。線量が低ければ疾患の早期X線スクリーニングがより高速に低コストで利用可能になるため、癌の早期発見に威力を発揮する。

ゴースト・イメージングは​​、対象に関する有意な情報を2つの独立したX線ビームの相関を利用する(下図)。 一方のビームは、基準となるランダムパターンを生成し、もう一方のビームは試料を透過する。

 

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Credit: Optica

 

研究チームは金属のスポンジのような金属発泡体を用いてX線パターンを作り出し、このランダムなビームの2D画像を計測、大面積のピクセル検出器で、試料を透過した別のX線ビームを計測した。物体の内部構造の3D断層画像を構築するために、トモグラフイーの原理で複数の照射パターンおよび試料 - 物体の向きについてプロセスを繰り返した。

研究チームは、直径5.6ミリメートル、直径2.0ミリメートル未満の2つの穴を含むアルミニウムシリンダーでゴーストX線断層撮影を実施した。研究チームは、1メートルの4800万分の1の解像度で、140万の個の「ボクセル」(3Dピクセル)を有する3D画像を生成することができた(下図)。

 

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Credit: Optica

 

X線ゴースト・イメージング、特にゴースト・トモグラフィー、は全く新しい3Dイメージング分野である。開発が進めば、医療用イメージング、産業用画像処理、セキュリティスクリーニング、探査のために、3D X線イメージングにX線ゴースト・トモグラフィーが標準になると考えられている。

 

放射光を利用したマルチプロジェクション

スイスのPSI研究チームは、欧州の放射光施設、DESY、ESRFと共同で、高輝度放射光を用いて3D画像を得る別の手法の研究開発を行っている。マルチプロジェクションと呼ばれる新しいアプローチ(下図)ではで、1回の照射情報を使用して、病院のX線源よりも1,000億倍明るいX線を使いマルチプロジェクションで9分割ビームを同時に使用して3D情報を構築する(Villanueva-Perez et al., Optica 5, 1521, 2018)。

 

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Credit: Optica

 

高輝度X線源は速いプロセスの観測能力と高分解能が特徴で、生物学や材料科学に威力を発揮する。高輝度光源のパワーは単一のパルス照射後に試料を破壊するため、これらの光源を用いた現在の3Dイメージングは、試料の複数のデータの積算を必要とする。新しい技術では、試料を破壊する前に3D画像を構築する測定を行うことができるので、生きている昆虫のような繊細な生物学的試料の運動機構を研究したり、ウイルスまたは蛋白質の内部の3D構造を調べることができる。

シングルショットによるマルチプロジェクションでは、入射X線ビームを結晶で9ビームに分割し、同時にサンプルを照射する。各ビームからの情報を記録する検出器を使用することにより、X線プローブビームによって破壊される前に、対象の9つの異なる2D投影を一度に取得することができる。

 

研究チームは、マイクロ秒からフェムト秒の範囲でμスケール分解能で、昆虫(蛾)のイメージングや、金ナノ構造のイメージングでナノメートルオーダーの解像度を達成した。研究チームは、毎秒100万回のX線パルスを提供するEuropean XFEL組み合わせることで、1秒間に数100万フレームの速さで、高速プロセスの3Dイメージングが可能になると考えている。

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Credit: Optica

 

上図(a)ESRFのID01ビームラインで使用される実験装置; (b)金ナノ構造試料のSEM画像; (c)〜(e)ダイレクトビーム(c)および(d)、(e)2つのプロジェクションのシミュレーション、実験の回折パターン、および対応するCDI再構成。 回折パターンおよび再構成におけるスケールバーは、それぞれ2×10 -2 nm -1および200 nmに対応する。

 

新技術の登場でX線3Dイメージングは対象に損傷を与えないようになると思われる。現在の医療CTの線量は一度受ければ1mSvであり、10回受ければ年間100mSvという原子炉作業員の線量上限に匹敵する被曝を受ける。しかし病院のオンコロジストたちは決して被曝という言葉を使わない。しかし大腸のバリウムX線撮影やCTは一度入院すれば検査は一回ではすまないから、一般人でも原子炉作業と同程度かあるいはそれ以上の被曝を受けることになるので、線量が100分の一になるならば安心して、3Dイメージング診断を受けられるようになるだろう。

 

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