NSLSIIが透過型X線顕微鏡(TXM)を10倍高速化

透過型X線顕微鏡(TXM)は先端技術で各国の放射光施設で精力的な開発が行われている高分解能X線イメージングの主役である。NSLS-II放射光のTXM開発チームは、従来より10倍高速に画像を得る高速TXMを開発した。

 

放射光を光源としたナノイメージング手法のなかでもTXMは基本的な測定技術だが光源と光学系の性能に大きく左右される。最近では3Dイメージング(トモグラフイー)にXANESを併用して電子状態の3Dイメージを計測するnanoXANESトモグラフイーも行われるようになった。

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Credit: sciencedirect

 

NSLS-IIのFXI(Full Field X-ray Imaging)ビームライングループは、TXMで3D画像を得る時間を以前の10分以上から1分に短縮した。3D空間解像度は50nm以下となる。これによりFXIビームラインのTXMは世界最高速となった(Ge et al., Appl.Phys. Lett. online Aug. 22, 2018)。

FXIビームラインでは、超高速ナノポジショニング(振動を制限しながらサンプルを移動する方法)、センシング(サンプル移動を追跡する方法)、および制御の最新の開発を使用してTXMを構築した。新しいTXM開発は、NSLS-IIの技術者、ビームラインの担当者、研究開発部署との共同作業で開発されたインハウス技術による。

 

FXIビームライン

FXIビームライン光源(下図)は100mm周期のダンピングういぐらー(DW100)。ビームライン光学系は、コリメートミラー、Si(111)2結晶モノクロメータおよびトロイダルミラーで構成されており、エンドステーションにある2次光源アパーチャにビームを集光させる。 ミラーは、適切なコリメートおよび焦点を達成するために長手方向にベンドされる。コリメータミラーには、Si、Cr、Rhの3つのストライプがあり、4.4 mradの入射角で、〜7 keV、12 keV、15 keVのカットオフエネルギーが得らる。トロイダルミラーはRhでコーティングされている。

 

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Credit:

 

FXIエンドステーション

FXIエンドステーションには透過型X線顕微鏡(TXM)が設置されている。この装置は、5〜11keVの範囲で30nmの空間分解能と20〜40ミクロンの視野が可能である。 500mAのNSLS-II運転条件では、完全な3次元断層撮影データセットを1分で取得することができるのが特徴だが、3D-XANESトモグラフイーも可能である。 ゼルニケ位相差モードの高コントラストイメージ測定にはより長時間が必要であるが、利用可能である。

NSLS-IIの光源としての設計が古いことは何度かふれたが、ダンピングウィグラーという加速器設計者の評価が分かれる挿入光源を使って得られた高輝度ビームは現在主流のMBA光源に引けを取らない。しかも高フラックスであることはフラックスに依存するTXMのような実験には都合が良かった。

 

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Credit: researchgate

 

3Dアニメーション

FXI-TXMを使用して、銀のデンドライト(樹枝状結晶)の成長を観測した実験では 1分で、試料の2次元画像を1060枚集め、それらを再構成して反応の3次元スナップショットが得られた。これを繰り返すことで化学反応の1分単位の3Dアニメーションを形成することができた。

 

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Credit: researchgate

 

FXIビームラインのTXMは一般公開が始まっている。NSLSIIの計測機器開発能力はインハウスに開発に専念することが本業である技術者が他施設に比べて多く、東部に集中した放射光関連企業に囲まれて、利便性が高い。こうしてみると光源の性能追求とは別の次元であるインハウス機器開発能力と雇用の底力が成果につながった印象が強い。ビームラインに設置されるTXMの詳細は別資料を参考にして欲しい。

 

NSLSに流れる独特の文化

NSLSIIのインハウス開発能力はラウエェンズの開発でも知られている。NSLSもNSLSIIも実験ホールで装置開発の話をしだすといつのまにか周りに専門家が集まって、最先端機器開発の熱気が感じられる。そういう開発環境は光源の性能競争と同じくらい重要なのが放射光であることからすると光源をつくりさえすれば良いという考えが浅薄なものであることを痛感する。

NSLSIIのあるブルックヘブン国立研究所は不便極まりない場所である。ニューヨークの空港から車で行くしかないし、ストーニーブルックのさらに先なのである。DOEの研究所だけあってかつては自動小銃を持った警備員が巡回していた敷地は広大で、野生動物と出くわすこともしばしばあった。それでもかつて原子炉が稼働していた頃には白根先生を始め中性子回折の聖地であり、NSLSのふたつの放射光リングはユーザーで溢れかえっていた。放射光を支えているのは結局「人」だ、という印象を持った。

 

 

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