高エネルギーγ線分光が挑む宇宙の粒子加速メカニズム

γ線分光が宇宙の粒子加速を通して宇宙の起源の解明につながると期待されている。γ線分光観測は衛星と地上の両面で活発な観測活動が行われている。2015年4月20日に、フェルミ衛星とMAGIC望遠鏡観測所は、宇宙の彼方に非常に活発なγ線源を発見した。

VERITAS

アリゾナ南部の望遠鏡アレイVERITAS(注1)は、PKS 1441 + 25として知られるこのエネルギー源から約200GeVのエネルギーを持つ高エネルギーγ線を検出した(下図)。

 

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Credit: sciencedirect

(注1)VERITAS望遠鏡施設(下の写真)にはDESYが関与している。地上ベースのγ線望遠鏡アレイは、直径12mの光反射器と光電子増倍管を備えた4つのイメージング望遠鏡で構成される。 VERITASは大気中で高エネルギーの光子によって開始された空気シャワーからのチェレンコフ光の微弱な光を検出するために作られた。チェレンコフ望遠鏡は、超高エネルギー(VHE)帯域(85GeV〜50TeV)において最高の感度を有するように配備されている。

 

veritas and building lite

Credit: VERITAS

 

VERITAS望遠鏡は最近アップグレードされた。アップグレード後のVERITAS望遠鏡は、光子検出効率が50%増加し、トリガ閾値が30%減少している(下の写真)。

 

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Credit: INSPIRE 

高エネルギーのγ線が、宇宙の彼方にあるクェーサーから、地球に届くまでに「光子の霧」の中で(光子との衝突で)失われずに届くのはなぜか。これが第一の疑問である。

次に、高エネルギーのγ線が、ブラックホールから遠く離れた場所で作られたメカニズムが問題である。

低エネルギーγ線は主に紫外線およびX線と相互作用する。星や銀河など可視光子源は多いが、低エネルギーのγ線を遮るほどのX線源はないから地球に届く。高エネルギーγ線は、銀河と銀河の間の空間を満たす星の可視光によって容易に破壊されるので、PKS 1441 + 25からの光は、宇宙の歴史の半分となる76億年以上を要して地球に到達した事実は、γ線の伝搬を妨げるクェーサーと地球との間の「光子の霧」の密度限界を与える。

 

電磁波は密度の高い環境で生じたらすぐに吸収され、密度が十分に低くなった場合にのみ、外側に伝播することができる。このためγ線はブラックホールからかなり遠い場所で生成していると考えられている。またγ線放射の変動は同時に観測されるRF放射の変動と同期していることから、RF波とγ線が同じ場所から放射されたことを示唆している。

粒子の流れがブラックホールから放出されると衝撃波を作る。ブラックホールから遠い場所でγ線を発生するメカニズムは衝撃波ではないかと考えられている。PKS1441 + 25は粒子風の衝撃が、ブラックホールの距離からエネルギーを輸送し、粒子を高いエネルギーにまで加速するメカニズムの根拠となっている。

 

DESYが積極的に宇宙起源のγ線観測に乗り出したのはごく自然で、宇宙を粒子加速器とみなしたとき、γ線分光は加速器実験同様に高エネルギー粒子と光子の相互作用を通じて、宇宙の起源、ブラックホールの理解につながるからである。VERITASの特徴はγ線イメージ観測の能力で、以下のプロットはバックグラウンドを除いたVER J2019+407と呼ばれるTeVγ線の分布である。

Background subtracted gamma ray counts map of SNR G782 21 showing the VERITAS copy copy

Creedit: arXiv

一方、TeVという高エネルギーγ線検出器の高感度化の研究開発も進んでいる。バークレイ研究所の開発したGRETA(Gamma-Ray Energy Tracking Array,)(下図)は完成後、ミシガン大学の稀同位体ビーム加速器施設FRIB(Gamma-Ray Energy Tracking Array)に組み込まれて、高感度の高エネルギーγ線検出器となる。

GRETA Berkeley Lab crop2

Credit: Berkley Lab

GeV領域まではγ線計測では加速器の世界では比較的身近な存在であったが、いまTeV領域の高エネルギーγ線計測は加速器から宇宙観測まで、広範囲の応用として注目されることになった。

 

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