プラズモン導波路に埋め込まれたナノダイアモンド量子デバイス

量子エミッタは、低損失プラズモニクス構成を介してモノリシックナノスケールプラズモン回路に集積されて、光を回折限界以下に制限することができる新しい量子デバイスである。この新しい量子デバイス分野は集積量子プラズモニクスと呼ばれる。

 

集積量子プラズモニクスとSPP導波路

集積量子プラズモニクスでは、金属 - 誘電体または金属 - 空気界面に沿って電磁波を伝播する表面プラズモンポラリトン(SPP)モードに基づく導波路が鍵となる。この導波路は従来の誘電体ベースの(したがって回折限界で制限される)光導波路よりも優れている。

これは、埋め込まれた量子エミッタからの利用可能なパーセル効果による増強による。このため、光信号処理および集積回路を実現するオンチップ集積化および小型化が可能となる利点を有している。回折限界を超えて閉じ込められたプラズモニックモードの伝搬を実現するために、単一光子のスケールで強い光 - 物質相互作用を利用した異なる金属 - 誘電体のデバイスが開発されている。

これらはナノスケールの分解能を備えた高度集積化光信号処理システム、センサおよび光学画像技術への展開が期待されている。過去に作成された様々なSPPベースのデバイスには、金属ナノワイヤ、平行ナノワイヤ、V溝およびウェッジ導波路があり、潜在的な量子アプリケーションのための単一プラズモン誘導が実証されている。

 

誘電体ハイブリッドSPP導波路(DLSPPW)

しかしこのような集積量子フォトニクスの実用化は、SPPモードの高い伝播損失および単一量子エミッタの制限された制御などの課題がありまだ時間がかかるとみられていた。窒素空孔中心を有する埋め込まれたナノダイヤモンドからなる単純な量子プラズモン回路を銀フィルム上に固定した低損失、誘電体実装SPP導波路( dielectric-loaded SPP waveguides, DLSPPW)が開発された。

南デンマーク大学の研究チームは、単一光子源とプラズモン導波路のオンチップ結合を実証することにより、統合量子プラズモニクスの分野で新しいデバイス(下図)を開発した(Siampour et al., Nature Comm. 7:61, 2018)。

 

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Credit: Nature Comm.

 

新しいアプローチでは、電子ビームリソグラフィを用いて製造された銀の層の上に誘電性水素シルセスキオキサン(HSQ)からなるプラズモン導波路内に埋め込まれた単一光子を放出するゲルマニウム空孔(GeV)中心を有するナノダイヤモンドを組み込んだ。

緑色レーザ光(532nm)をグレーティングカプラを介して導波路の一端に結合させてナノダイヤモンドに伝播させると、Ge原子のV中心を励起し、導波路のプラズモンモードに結合した単一光子を放出した。この研究では、チップベースの量子回路の開発に新しい道を開くために、長い導波路透過長(33μm)と効率的な結合(56%)を実現した。

 

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Credit: Nature Comm.

 

プラズモン導波路に埋め込まれたナノダイヤモンドのオンチップ励起(上図)は低損失プラズモン導波路に沿った緑色レーザ光(532nm)の透過を示す。a)は単結晶フレーク(上)のSEM画像およびAgプレートの頂部に作製されたDLSPP導波路(下)、b)は導波路の光学特性である。

ナノダイヤモンドは、高圧、高温(HPHT)法を用いて製造したもので、単一のGeVセンターを組み込むために、成長プロセス中にGeが導入された。他の作製法で成長したAg膜と比較して、SPP減衰率をかなり低下させた単一銀(Ag)結晶に組み込む手法を提案・実証した。この方法は、プラズモンチップ内に組み込まれたナノダイヤモンドのGeV中心の励起波長および発光波長で十分に長いSPP伝播が確認された。

 

研究チームは走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、生の試料中に合成GeVナノおよびマイクロダイヤモンドの構造を観察した。合成ナノダイヤモンドをAg被覆シリコンウェハ上にスピンコートし、共焦点蛍光顕微鏡で観察した。

 

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Credit: Nature Comm.

新デバイス構造は、高集積回路に適した、ナノダイヤモンド中の単一のGeV中心に基づく、超高輝度、単色性の良い安定な単一光子源となることが確認された。 同時にGeVナノダイヤモンドの分極特性も測定され、周期律表の第IV族元素(例えば、シリコン空孔SiV、ゲルマニウム空孔GeV、およびスズ空孔SnV)に基づくダイヤモンド色中心のモデル偏光特性に矛盾しない。

波長(λ)が602nmの場合、約6倍のパーセル効果による増強、56%の結合効率、および約33μmの透過長により、FOM=180から新デバイスはハイブリッド量子プラズモンシステムと比較して優れていることが示された。

 

電子ビームリソグラフィを用いて、Ag基板上にHSQレジストを用いて導波路を作製し、単一のGeV中心を特徴とするナノダイヤモンドを組み込むテクノロジーは、1nmまで製造可能なナノダイヤモンドのサイズによって制限されるが、SEMイメージングで約30nmの精度を有する。研究チームは作製した導波路を、緑色ポンプレーザーを介してナノダイヤモンド励起後に原子間力顕微鏡(AFM)および電荷結合素子(CCD)カメラで可視化した。

 

この研究は、励起レーザ、量子エミッタ、およびプラズモン回路を同一チップ上に集積する方法の開発に指針を与えるものである。これまでチップ上の単一プラズモンおよび2プラズモン干渉の検出が実証されているが、今回の技術を追加して、将来はチップ上に量子プラズモン回路のすべての要素を統合することが可能になると期待されている。

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