暗黒物質モデル制限を書き換えた中国のPandaX-II実験

暗黒物質すなわち宇宙の非光物質は、宇宙の物質の85%を占めるとされる。通常の物質とは異なり、光を吸収、反射、放出しないため、検出が困難である。間接的な重力効果から推測せざるを得なかった暗黒物質と普通の物質との関係は不明な点が多い。暗黒物質の直接検出は、暗黒物質を構成すると考えられている仮想粒子(WIMP粒子)である。

このほどカリフォルニア大学(リバーサイド)を中心とした国際的な研究チームは、暗黒物質が通常の物質とどのように相互作用するかという条件を絞り込むことに成功した。

 

研究チームは、WIMPパラダイムの基盤となる2000年に有名な天体物理学者によって提案されたSIDM(self-interacting dark matter)(注1)は、2009年頃から、粒子物理学と天体物理学の両方で注目されるようになった。暗黒物質の粒子がPandaX-IIの液化キセノンと衝突すると、光子と電子の2つの同時信号が発生する。

(注1)SIDMモデルはメディエーター粒子の質量の約0.001倍の軽い暗黒物質粒子であり、世界で最も敏感な直接手段であるPandaX-IIでSIDMモデルを検証することができる。

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Credit: PandaX Coloboration

 

研究チームはキセノンチェンバーPandaX-II実験で2016年と2017年に収集された最新のデータを解析して、暗黒物質が重力相互作用以外の手段(重力相互作用だけでは不十分)で正常物質(陽子や中性子との)相互作用を特定する信号を探索した。なお研究チームは、暗黒物質と正常物質との相互作用を媒介するメディエーター粒子は、WIMPパラダイムのメディエーター粒子よりはるかに質量が小さいと仮定している。

メディエーター粒子が、陽子の質量の100倍から1000倍まで、または暗黒物質の粒子の質量に対して非常に重いと仮定するWIMPパラダイムは30年以上にわたり主流の考え方であったが、天体観察ではその予測が検証されたわけではない。研究チームはPandaXII実験が軽いメディエーターを示唆し、暗黒物質と目に見える物質との間の相互作用強度に関する強い制限を与えることを明らかにした。

(Ren et al., Phys. Rev. Lett. 121, 021304, 2018

 

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Credit: Phys. Rev. Lett.

 

PandaX-IIは実際にパンダが豊富な四川省中国錦平地下研究所にある。世界で最も深い地下実験施設となるPandaX-IIは、世界で3つのキセノンベースの暗黒物質直接検出実験のうちの1つであり通常の物質と相互作用する暗黒物質粒子を直接観察で暗黒物質の粒子特性を理解する研究拠点である。

 

中国のパンダ熱は高い。世界有数のメガソーラー企業Panda Green Energyから、暗黒物質を探求する国際コラボレーションPandaX-IIまで、枚挙にいとまがない。パンダはいつの間にか中国の科学技術であることを誇示する登録商標のようになった。

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