フォノンナノプローブ電子顕微鏡HERMES

オークリッジ国立研究所の研究チームはナノ物質のフォノンを直接プローブする電子顕微鏡を開発した。フォノンナノプローブ電子顕微鏡エネルギー利得/損失分光によってナノ構造の熱拡散を直接観察できる(Idrobo et al., Phys. Rev. Lett. 120, 095901, 2018)。

 

HERMES

開発された装置の元になったのはNion社製のHERMES(High Energy Resolution Monochromated Electron energy-loss spectroscopy-Scanning transmission electron microscope)で、研究チームはホワイトグラフェンと呼ばれるh-BNを資料として高分解能エネルギー分光実験を行った。下図はナノプローブ電子線と物質の相互作用に関わる観測手法の模式図。

 

Picture20 2

Credit: GATAN

 

エネルギー利得分光

エネルギー利得分光は1966年に報告された比較的新しい技術である。研究チームはエネルギー利得スペクトルが温度に敏感であることが知られていたこの手法を使ってナノ物質の温度を調べることを思いついた。エネルギー損失分光では物質を電子ビームが透過する際に、相互作用(非弾性散乱)でエネルギーを失う。

HERMESはエネルギー損失と微小なエネルギー利得の両方を観測することができる。Nion社の高分解能エネルギー分光システムは下図に示すように、これまでゼロロスピークによって隠されていた領域に重要な情報が読み取れるようになることを示している。ゼロロスピークの半値幅(FWHM)は250meVで、赤い実線のFWHMは14meVである。

 

1653 0 9801c9bf fig1

Credit: microscopy.cz

この図で青色のスペクトルはSiO2試料の2nmスポット領域のデータで、140meVのエネルギー損失ピークは光学フォノンピークで1100cm-1の赤外ピークに対応している。

研究チームはホワイトグラフェン試料のデータ(下図(a))で、ゼロロスピークに隠れていたエネルギー利得温度(b)とエネルギー損失(c)の温度変化を測定できた。

 

medium copy copy copy copy copy copy copy copy copy

Credit: Phys. Rev. Lett.

 

この研究ではチェコのNion社が、長年蓄積してきた高分解能エネルギー分光の技術が使われている。イメージングや分光のナノプローブは今後、電子回路伊賀に触媒などナノ構造体をベースとする材料の研究が加速することから、強力な研究ツールとなる。

 

筆者は東欧を訪れた際に結晶学の研究層が厚く、静かな研究所の環境が振動を嫌う電子顕微鏡の研究に適していることと実感した。人影もまばらな静かな環境で落ち着いた研究ができることは近年、難しくなってきている。東欧の環境がNion社が独自性の高い研究機器を開発し続ける背景にあることが理解できた。

 

You have no rights to post comments

スポンサーサイト

Copyright© 2013.   放射線ホライゾン rad-horizon.net   All Rights Reserved.