太陽コロナのMHD加熱メカニズムが解明される

Magnetohydrodynamic(MHD)、電磁流体という分野はほプラズマ物理や地球物理の研究者以外は縁遠い印象である。しかし実は誰でも毎日その恩恵を受けて生活しているといえる。すなわち地球や太陽の内部には流体運動(電流)が磁場を形成する対流層が存在するからである。

一般に太陽の温度といえば6,000度Kと言われるが、それは表面付近の光球の温度であり、それより外側の彩層とさらに外側のコロナは、それぞれ10,000度Kと1,000,000度Kと極端な高温にある。地球に影響を与える太陽フレアはコロナの爆発現象だが、光球は対流によって攪拌され平均化されているので、コロナよりはるかに安定している。

 

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Credit: aasnova

クイーンズ大学ベルファストの研究チームはアルヴェーン波と呼ばれる磁場中のプラズマを伝わる磁気流体波が表面層が高温に加熱されるメカニズムであることを解明した。太陽の光球温度に比べて外側のコロナが166倍も高温になることはこれまで謎であったが、初めてそのメカニズムが明らかになった(Grant et al., Nature Physics online Mar. 05, 2018

 

アルヴェーン波

1942年にスエーデンの研究者ハンネス・アルヴェーンが磁場中のプラズマ中を磁場の方向に伝搬する磁気流体波(横波)の存在を予測した(1970年度ノーベル物理学賞)。アルヴェーン波はその後、天文学だけでなく核爆発からMRIイメージングに至る極めて幅広い分野の電磁流体に存在することが確認されている。

下図は2014年8月24日の太陽大気(高級より外側の部分)の構造。

 

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Credit: Nature Physics

 

太陽の外側の加熱メカニズムへの関与が研究されてきたが、決定的なメカニズム解明には至らなかった。研究チームはニューメキシコ州のNASA太陽望遠鏡を用いて、太陽黒点に現れる強い磁場を解析し太陽光(プラズマ発光)の波長成分と比較してアルヴェーン波はエネルギー衝撃波のようにプラズマを圧縮して加熱することが明らかにされた。実測されたこのメカニズムによる局所的な温度上昇は5%で理論予測と一致した(下図)。

 

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Credit: Nature Physics

エネルギー源となる対流層は比較的安定した穏やかな状態だが、アルヴェーン波によってプラズマが加熱され荒れ狂う高温プラズマのコロナが形成される。核融合研究や高強度レーザーの進展は極限状態のひとつである高温プラズマの理解に繋がった。レーザーウエークフイールド加速器の研究もレーザー技術の進展によるところが大きい。21世紀はプラズマの世紀という表現が現実味を帯びてきた。今後の課題は核融合に代表されるように高温プラズマの閉じ込めと制御になるだろう。

アルヴェーン波の発見から70年が経過したが、太陽コロナの加熱メカニズムだけでなく今後は、多くの分野で定量的な電磁流体の解析が進むものと期待されている。

 

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