放射光サイエンスの未来

 日本はかつて放射光大国であった。米国を例外とすれば一国のユーザーに開放された放射光はたいてい一カ所だが、日本には現在でも9箇所あるし、一時には専有マシンが関東だけでも5-6基が稼働していた。また医療用の重粒子加速器が全国で15カ所で予定されている。さらに東北地区にILC誘致の動きがあることなどを含めて考えると、他国からすればまさに恵まれた加速器科学の環境である。写真は英国を代表する"Diamond"。英国は一極集中だが財政的にもそうするしかなかった。日本は複数の大型から小型まで取り揃えたバリエーションの豊富さで抜きん出ている。

 

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 しかし最近になって放射光サイエンスに将来がみえにくくなったという声があちこちで聞かれる。放射光サイエンスの発展とは何かを考えるときに、我々が直面しているのは、最先端科学の必然的問題かもしれない、とも思える。

 あるサイエンスが加速度的に発展すれば、やがて増大の一途は変化が鈍くなりやがて飽和に達するのは一般的な事象なのだ。つまりひとつの放射光施設の問題ではない。一握りの最先端研究(国際競争が激しく、最新の放射光施設が必要)に焦点を合わせるならば、常に先端施設をつくり続けなくてはならないし、老朽化したら廃棄して行かないといけない。一方、裾野を含めた最大多数のユーザーが満足する汎用マシンで、性能よりむしろ周辺設備の充実とスループットを高め全体のアウトプットで勝負する、というアプローチもある。

 

 先端的光源として世界の先端にいるXFELのサイエンス戦略の次に何が来るだろうか。ラテイスの改良により性能が向上した円形加速器が回折限界光源として復活するのか、また直線加速器と超伝導空洞のERLが先端科学を牽引していくのか。これらはいずれも加速器科学の先端にあり先端科学を引っ張っていくことは容易に想像できる。歴史をみればいつの時代にも先端科学が先陣を切ってやがて広範囲に影響を及ぼし全体の進歩があったことも事実である。

 

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写真は現在、アウトプットでXFEL科学の先端にあるLCLS

 

 一方、統計的には2003年に高エネルギー第三世代放射光のひとつAPSの論文数が世界中の放射光以外の光源による構造解析論文の総数を越えた。ひとつの放射光施設でもスループットに重点をおけば、アウトプットで世界と勝負できることも事実である。つまりふたつの方向性(先端性と汎用性)のどちらの方向性も「有り」なのである。

 加速器の先端性か、汎用で全体のアウトプットに焦点をあてるか、選択しなければならない。いずれにしても将来を決めるのはユーザーである。ベストプランを慎重にかつ賢く選択できれば、自然な流れができるのであろう。しかしながら大型施設に惜しみなく予算をつぎ込めた時代はとうに過ぎ去った。国の債務が1,000兆円を越えた。下手をすればこの国の財政破綻に貢献することになる。

 

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 先端施設は集中して共同利用、汎用の場合には地域の拠点、地方分散が理想であろう。加速器科学には相反するこのふたつの側面で何らかの「ブレークスルー」が求められる。写真は日本を代表するSPring-8。ここまでは選択肢はなかったが、次に何をつくるかを真剣に考えるべき時が近づいた。つくりすぎた施設全ての更新はないので、整理統合も含めて現実的な戦略が必要である。

 

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