MEDSI2014について

 2014年10月20日(月)〜24日(金)にMEDSI2014(International Conference on Mechanical Engineering Design of Synchrotron Radiation Equipment and Instrumentation)がメルボルン(オーストラリア)のHilton on the Parkにて開催された。    

 MEDSIは2000年に始まった放射光関連装置の機械設計技術に関する国際会議で,2000年から2年ごとに開催されている。国際委員の方にお誘いいただいたこともあり,研究所からは筆者を含め3名が参加した。初日(20日)は有料の講習会で,
 "Mechanical Stability for New Generation Light Sources",
 "Properties of Synchrotron Radiation and High Heat Load Challenges",
 "Optical Design and Mechanical Engineering Challenges",
 "Magnet Designs for Low Emittance Storage Rings" 
の4件の講習が行なわれた。

 21-23日は通常のプログラムで,"High Power Loads and Novel Cooling" セッション(口頭発表6件),"Mono/Mirror Design and Opto Mechanics" セッション(口頭発表8件),"Next Generation Light Sources" セッション(口頭発表15件),"Novel Endstation Design" セッション(口頭発表7件),"Precision Mechanics/Other Topics"セッション(口頭発表7件)から構成されていた。

 プログラムと多くの発表のPDFファイルがMEDSI2014のホームページに掲載されているので関心のある方は参照されたい。すべてシングルセッションで口頭講演は質疑を含めて20分と長く,深い議論を交わすことができた。口頭講演の聴衆は70名程度であった。  

 masefig1new

 上の写真:MEDSI2014の口頭講演会場。つねにほぼ満席だった。    

ポスターセッションの時間は特に設けられておらず,空いた時間にポスターを見に行く形式であった。ポスターの発表件数は70件程度であった。もっとも感銘を受けたのは,Phillipe Marion さんによるESRFの蓄積リング改造計画に関する口頭発表であった。  それによると,ESRF ではDouble Bend AchromatをHybrid 7 Bend Achromatに変更して水平エミッタンスを4 nmradから0.15 nmradに下げる改造計画を進めている。2014年に計画が承認されたようで,2018年10月15日にユーザー運転を停止して蓄積リングの改造を始め,2020年6月1日にユーザー運転を再開する予定,予算は1億ユーロ(約144億円)とのことである。

 エネルギーと電流値,周長はほぼ現状通り(6 GeV,200 mA,845.98 m),既存の挿入光源とビームラインは現状維持,入射システムは再利用という条件で,10 keVにおけるアンジュレーターの輝度を現在の30倍,コヒーレンスを25倍に改善する。すでに新しい二極,四極,六極,八極,二極−四極ハイブリッド電磁石と電磁石群を設置するガーター,真空ダクト,アブゾーバー等の詳細な図面ができており,振動解析,試作も始まっている。  

   一方,SPring-8のビームエネルギーを6 GeVに下げ,Double Bend Achromatを5-Bend Achromatに変更して水平エミッタンスを2.4 nmradから0.15 nmradに下げるSPring-8-II計画が紹介された。APSにおいてもMulti Bend Achromatを採用して輝度を2桁向上させる計画を検討している。

 2007年10月に運転を開始したばかりのDIAMONDでも2016年夏にDouble Bend AchromatをDouble Double Bend Achromatに変更して,水平エミッタンスを2.7 nmradから0.25 nmradに下げるとともに短直線部を増やすとのことである(http://www.medsi2014.org/assets/MEDSI2014/Presentation-Slides/Jim-Kay.pdf)。MAX IVが提唱したMulti Bend Achromat蓄積リングの概念が成熟し世界の先端的放射光施設の主流となりつつあること,多くの機械技術者がその実現に向けて着々と準備を進めていること,MEDSIが最先端の技術発表会となっていて技術者の情報共有が進んでいることが強く印象に残った。

 日本ではSPring-8-II計画と東北大グループらによる4 Bend Hybrid Achromat を採用した中型高輝度放射光計画が提案されている(Synchrotron Light in Tohoku, Japan,SLiT-J,http://www.lns.tohoku.ac.jp/slitj/)。このような先端的放射光施設が日本でも早く実現し,多くのユーザーが利用できるようになることを強く願っている。

  XFELに関しては, 
   ピエゾ駆動適応ミラー, 
   液体窒素冷却X線分光器

 ビームラインに関しては, 
   水冷・空冷4象限マスク, 
   光学素子の冷却, 
   光学素子の振動解析

 エンドステーションに関しては, 
   磁気共鳴散乱測定装置, 
   ナノイメージング装置,  
   結晶構造解析装置, 
   超小角散乱装置 
などの発表が特に興味深かった。関心のある方は是非URLを参照されたい。

    筆者は21日に"In situ removal of carbon contamination from optics, suppression of higher harmonics in the carbon K-edge region, and development of low-cost and high-performance non-evaporable getter (NEG) pumps"というタイトルの口頭発表を行なった。

 他に筆者が所属する研究所から光学素子のin situ炭素汚染除去技術,銅合金を用いた4象限可動マスク,高性能低コスト非蒸発ゲッター(NEG)ポンプなどが報告された。

 masefig2

  上の写真:高性能低コスト非蒸発ゲッター(NEG)ポンプを紹介する筆者  

 特にin situ炭素汚染除去技術は関心を集め,質問が多かった。また,"Double surface bimorph mirror for new high brilliance X-ray beamline, PF BL-15A"というタイトルでポスター発表を行ない,PFの短周期アンジュレーターを光源とする高輝度SAXS/XAFSビームラインBL-15Aで採用したDouble surface bimorph mirrorの設計,製作,性能についての報告があった。このミラーによって,強集光ビームと低発散ビームの高速切り替えが可能になり,タンデムビームラインの切り替えが容易に短時間でできるようになった。

 "Beamline front end for in-vacuum short period undulator at the Photon Factory storage ring"というタイトルのポスター発表では,2013年の夏の停止期間にPFリングにインストールされた短周期アンジュレーターSGU#15に対応するためにBL-15の基幹チャンネルの更新を行なったこと,そのために新規開発されたアブソーバを中心にPF基幹チャンネルの要素技術開発を行なったことを報告した。

   "The vacuum system of the compact energy recovery linac"というタイトルのポスターでは,cERL真空システムの設計方針と開発項目,特に低インピーダンス真空コンポーネントとしてビーム路をシームレスに繋ぐ特殊フランジやRFシールド付きスクリーンモニター,およびビームダクト内面をポンプとして作用させるNEGコーティングについて報告があった。

 最終日の24日午前にはAustralian Synchrotronの見学が行なわれた。Australian Synchrotronはメルボルンの中心部からバスで25分程度の場所にあり,立地条件が非常に良い。予算削減でビームライン建設が進まないとのことであったが,完成したビームラインはいずれもよく整備されていて参考になった。Australian Synchrotronの技術者は全部で40名とのことなので,人員的にもPFより恵まれている。

 masefig3

  上の写真:Australian Synchrotronの外観。立地条件がよく,建物も美しい  

 次のMEDSI会議は2016年にスペインのバルセロナで行なわれることになった。ホストは2010年にユーザー運転が始まったスペインの放射光施設ALBAである。本国際会議では多くの放射光関連技術者と知り合うことができた。バンケットはHilton on the Park内で行なわれ,料理も素晴らしかった。本会議で学んだことは今後のPF将来計画,ビームライン建設等に役立てたいと考えている。

 

  注)本記事はPF News (32(4), 23-24 (2014))からの転載(一部修正)です。  

You have no rights to post comments

hitachihightec

hitachihightec science

Copyright© 2013.   放射線ホライゾン rad-horizon.net   All Rights Reserved.