高輝度放射光によるPt3Niナノ粒子成長経路の推定@NSLSII

水素燃料電池は、クリーンで再生可能なエネルギーを生産するための有望な技術だが、カソード材料の低コスト化が普及に向けての大きな課題となっている。燃料電池の多くは、水素を電気エネルギーに変換するのに、高価な白金ベースの触媒を用いる。水素燃料電池を商業的に普及するためには、白金と同じ効率で低価格の触媒が不可欠になる。

 

白金に代わる触媒の探索

米国の放射光NSLS-IIとアクロン大学の研究チームは、燃料電池のカソード材料の探索を行い、八面体(形状のナノ粒子を形成する白金とニッケルの金属の組み合わせで触媒を合成する新しい方法を開発した(Shen et al., Nature Comm. 9: 4485, 2018)。

この触媒は白金に代わる最も効率的な代替品のひとつとなるが、八面体形状に成長するメカニズムはよくわかっていない。成長プロセスを理解するために、研究チームはNSLS-IIの超高輝度X線とその場およびオペランド軟X線分光法(IOS)ビームラインを使用して、研究者らは触媒の成長経路の化学的特性をリアルタイムで明らかにした。下図はPt3Niナノ粒子の成長過程における表面組成の変化。

 

 

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Credit: Nature Comm.

 

大気圧X線光電子分光

さらに研究チームは成長反応中のナノ粒子中の金属の表面組成および化学状態を調べるために、大気圧X線光電子分光法(AP-XPS)を使用して、成長反応中に金属白金が最初に形成され、ナノ粒子の核となることを発見した。次いで、反応がわずかに高い温度に達すると、白金は金属ニッケルの成長を助長しナノ粒子の表面に偏析することがわかった。

成長の最終段階では、表面の2つの金属はほぼ等しい混合物になる。白金とニッケルとの間のこの協調プロセスは、ナノ粒子の八面体形状およびその反応性の発現に重要な役割を果たしている。

 

ニッケルが安価な材料で白金は高価なので、ナノ粒子の表面のニッケルが反応活性なら、低コストの高性能触媒が製造できる。実際の成長条件下で、ナノ粒子の組成と化学状態の変化をリアルタイムで追跡した研究で、八面体形状の触媒を形成する際の偏析ニッケルの重要な役割が明らかになった。

NSSIIのIOS(In-situ operando soft x-ray spectroscopy)ビームラインは、その名の示すようにこの研究例に代表されるバッテリーサイエンスや触媒科学に威力を発揮する、「お手本」のようなビームラインである。NSLSIIの特徴は光源の最高性能を追求する代わりに、NSLSの層の厚いスタッフとユーザーが物質科学の目的意識を共有して地に足のついた設備整備を進めたことではないだろうか。

なおこの記事についてはすでに概要を別途、紹介済みなので、そちらも参照いただければ幸いである。

 

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