全く新しい酸素発生反応触媒〜放射光オペランドXAS@SOLEIL

太陽光や風などの再生可能エネルギーを貯蔵するには蓄電技術の他に、太陽光で水分解し水素エネルギーで貯蔵することができる。水素は燃料電池で電力として使用できる。水素はクリーンな燃料なので、世界中の研究チームは反応のエネルギー効率の高い水分解触媒の開発を行っている。再生可能エネルギーを使う水分解プロセスは近年目覚ましい発達を遂げたが、ここで紹介する新しい金属酸化物触媒は高性能実用材料として期待を集めている。

 

研究開発の焦点は、酸素発生反応(OER)にある。これは、水分解において最も困難なプロセスのためである。長年の鋭意研究の結果、ニッケル鉄酸化物は、①高い活性と地球に豊富な組成と、②すべての金属の中で反応部位当たり最高の活性を有するために、アルカリ条件下でのOER用触媒として確立されている。

 

新型OER触媒

約3年前、中国の研究チームは、ニッケル-鉄酸化物よりもかなり活性の高い別の触媒を発見した。その後、概念実証プロジェクトで触媒のテストを始め、触媒により、200 mV少ない電圧で工業的条件下でも機能する効率的な電解が可能になった(Song et al., ACS Central Science online Feb. 26, 2019)。

研究チームは密度汎関数理論(DFT)計算を使って理論的研究を並行させ、新しい触媒の高い活性は鉄とニッケルの酸化物の2つの相の協同的な作用(二機能性メカニズム)によることを発見した。このDFTに基盤を置く新メカニズムを実証するため、フランスの放射光SOLEILで触媒の活性と特性に関する実験が行われた。

 

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Credit: ACS Central Science

 

オペランドXAS

この研究は、X線吸収分光法(XAS)を使用して、触媒中に2つの相分離した鉄とニッケルの酸化物の存在を明らかにした。しかし、触媒は触媒作用の間に組成上および構造上の変化を受ける可能性があるので、XASを用いてオペランド実験が必要だった。SOLEILのオペランドXAS実験によって、従来のニッケル-鉄酸化物とは対照的な、新しい酸化金属触媒がDFTが提案した二機能メカニズムと矛盾しないことが明らかになった。

この新型触媒の構造は従来のニッケル-鉄酸化物とは異なり、γ-NiOOH支持体に共有結合したγ-FeOOHのナノクラスターでできている。

 

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Credit: ACS Central Science

 

いまやDFTによる電子状態の知見を抜きに触媒の設計は成り立たない。またオペランドXASによるメカニズムの実証は有効なアプローチで、放射光の得意とする分野である。

 

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