高輝度X線源による隕石衝突再現実験

DESYおよび米国のアルゴンヌ国立研究所の研究チームは、研究室で隕石衝突後の環境を再現し、2つの長石鉱物の構造変化をX線で追跡した。圧縮率に応じて、構造変化が非常に異なる圧力で発生する可能性を示す実験結果は、地球や惑星にクレーターをもたらす条件を再現する。(Sims et al., Earth and Planetary Science Lett. 507, 166, 2019

 

隕石の影響は、私たちの太陽系における地球や他の惑星体の形成と進化において重要な役割を果たしている。しかしその大きさ、速度、ピーク圧力と温度などの衝突条件は、通常、衝突クレーター内の岩石形成鉱物の恒久的な変化を調べることで推定される。しかし衝突イベントの数百万年後のクレーターで岩石から衝撃条件を推定するのは困難である。

ここ数十年で衝撃条件と岩石形成鉱物の圧力と温度による構造変化の関係が明らかになりつつある。長石族鉱物アルバイト(NaAlSi 3O8)、灰長石(CaAl2 Si2O8)およびそれらの混合斜長石(NaxCa1-x Al2-xSi2 + xO8)は、惑星地殻に非常に豊富に存在する。圧力と温度に関するこれらの鉱物の構造変化や非晶質化は地球形成過程の重要な指標となる。下図は典型的な高圧下のX線回折パターン。

 

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Credit: Earth and Planetary Science Lett. 507, 166, 2019

 

長石族鉱物の静的または動的圧縮では、これまで非晶質化転移の圧力条件について報告された値は大きく異なる。これらの違いは、鉱物の圧縮率によるプロセスの理解に大きなギャップがあることを示唆している。これは、隕石の速度、大きさを岩石から推定する際に誤差となる。

鉱物の結晶構造は、回折パターンから決定することができる(下図は1D検出器で測定された粉末回折パターンの時間変化)。

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Credit: Earth and Planetary Science Lett. 507, 166, 2019

 

最近のX線検出器技術の飛躍的進歩とPETRA III、APS、ヨーロッパX線自由電子レーザーなどの非常に強力なX線源の出現によって高温高圧下の構造解析が可能になった。この実験では、X線回折パターンを継続的に収集しながら、ガスまたはアクチュエーターで制御されたダイヤモンドアンビルセルを使用して急速圧縮を行った。研究チームは、実験で異なる圧縮率でのアルバイトとアノーサイトの非晶質化を80GPaの圧力に圧縮して観察した。実験では、毎秒0.1GPa/sから81GPa/sまでの圧縮率変化速度を用いた。

その結果、圧縮率に応じて、非常に異なる圧力で鉱物が非晶質化転移を起こすことがわかった。 「圧縮率が上がると、観察される非晶質化圧力が下がる。例えば、0.1GPa/sの最低圧縮速度では、アルバイトは31.5GPaの圧力で完全にアモルファスに変わったが、81GPa/sの最高速度ではこれは16.5GPaで起こった。斜長石鉱物の非晶質化は、隕石衝突中の特定のピーク圧力と温度条件を示唆するための明確な標準とはなりにくいことが明らかになった。下図は加圧によるSEM画像の変化。Aは加圧前、bは0.1GPa/sで加圧後、cは35GPa/s加圧後のクエンチ状態。

 

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Credit: Earth and Planetary Science Lett. 507, 166, 2019

 

この研究でこれまでの高圧実験の非晶質化圧力に大きなばらつきがあることが理解された。高圧実験はPETERAIIの極限環境ビームライン(ECB)(下図)とAPSの16-IDB(HPCAT)ビームラインで行われた。

 

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Credit: DESY

 

PETRAIIIのECBのフラックスは一次光ではエネルギーにギャップが生じるが高次光を用いれば下図のように、支障はない。高エネルギー領域での高フラックス性能はずば抜けている。高フラックス性能も考慮する必要性があることを見せつけるかのような実験である。

 

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Credit: DESY

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